トランプ派を憤慨させた下院議長の「裏切り」
ジョンソンはこの言葉を真剣に受け止めた。その代償として、下院議会で解任動議を突き付けられるかもしれない。
ジョンソンに批判的な勢力にとってなお一層腹立たしいのは、その心変わりが「ディープステート(闇の政府)」の状況説明によって促されたということだ。
トランプ主義者の間では、中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)、司法省および国土安全保障省はグローバル主義のプロパガンダの源泉だというのが一つの信仰箇条になっている。
ジョンソンはこのため、ウクライナはロシアに服従しなければならないというトランプ主義の外交政策の主たる大義を裏切っただけでなく、ワシントンの政治についてのトランプ主義者のナラティブも否定したことになる。
もしウクライナについてのCIAの説明を信じられるのなら、安全保障についてのほかの説明も真剣に受け止めるかもしれない、というわけだ。
法廷で睡魔と戦う前大統領
しかし、今回の採決は今後の振る舞いの弱い指針にしかならない。トランプはどうやら、上の空の状態で法案可決を容認したようだ。
採決の前日までの4日間、口止め料の支払いをめぐる刑事裁判の陪審員選定をめぐって弁護士らが論戦を続ける傍らで、必死に睡魔と戦っていた。
その疲労の一部は間違いなく、深夜のソーシャルメディアの利用にあった。しかもその書き込みのなかには、裁判内容の公表禁止令違反が疑われるものもある。
トランプが法廷でスマホの利用を禁じられたり、着席するよう複数回命じられたりしていることが、その活力にプラスになるはずがない。
あと6週間はこうした我慢を強いられる。
法廷で付き添ってくれる家族はまだいない。
元ファーストレディーで、ひょっとしたらその役目をもう一度担うかもしれないメラニア・トランプが、夫と寝た(前大統領は否定している)と言っているポルノ・スターのストーミー・ダニエルズが証言台に立つことになっている場所に近づくことはなさそうだ。