(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年4月17日付)

ワシントンで開かれた2024IMF世銀・春季会合(4月19日、写真:AP/アフロ)

 武装ドローンやミサイルを数多く発射してイスラエルとの紛争をエスカレートさせることにしたイランの決断により、この2国が下手をすれば米国も巻き込んでおおっぴらに戦争を始めるリスクがさらに高まった。

 何と言っても、イスラエルの戦時内閣を率いるベンヤミン・ネタニヤフ首相がイランの核開発プログラムを長らく破壊したがっていることは、秘密でも何でもない。

 米国にはそれに同調する向きもある。これをタカ派の好機と呼ばずして何と呼ぼうか。

中東紛争のリスク

 筆者は2023年10月に発表したコラムで、そのようなエスカレートこそイスラム組織ハマスによる殺意に満ちたイスラエル攻撃が世界経済にもたらし得る最大の危険だと論じた。

 世界経済の石油集約度(一定額の国内総生産=GDP=を産み出すのに必要な石油の量)は過去50年で半分以下になったとはいえ、石油が欠くことのできないエネルギー源であることに変わりはない。

 もしその供給が著しく滞れば、経済には甚大な悪影響が及ぶ。

 しかも、ペルシャ湾岸地域は世界でもダントツに重要なエネルギー生産地だ。

「世界エネルギー統計レビュー2023年版」によれば、この地域は世界の石油確認埋蔵量の48%を擁しており、2022年には世界全体の石油消費量の33%を生産していた。

 さらに不安なことに、米国エネルギー情報局(EIA)によれば、2018年に世界に供給された石油の2割はペルシャ湾の入り口にあたるホルムズ海峡を通って持ち出されている。

 この海峡は、世界のエネルギー供給の隘路なのだ。

 イランがイスラエルと戦争を始め、そこに米国が加わったりすれば、大変な事態になりかねない。