連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識

「雨ニモマケズ・・・夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ慾ハナク・・・」。宮沢賢治は生涯童貞だったといわれている

 韓国の統計庁が2月28日に発表した「2023年人口動態調査」によれば、合計特殊出生率は0.72と前年を0.06下回った。

 国際連合(UN) の世界の人口の予測「World Population Prospects」によれば、韓国の出生率は世界最下位となっている。

 シンガポールは1.02、台湾1.11、中国は1.16、タイは1.33と近年、アジア諸国においても出生率が下降傾向にある。

 厚生労働省の発表によれば、2022年の我が国の出生率は1.26で、統計を取り始めてから最も低い数値である。

 総務省が2024年4月に公表した2023年の日本人の人口減少数は83万7000人で、前年度2022年の減少数80万523人を上回る過去最大の落ち込みとなっている。

 一方、75歳以上の高齢者は2007万8000人で、初めて2000万人を突破した。

非性交が社会を歪める

 動物の世界では、力関係による支配や服従が見られる。例えば、猿では弱い雄が強い雄に対し、雌の猿がする性交の体位をとることがある。

 それは同性愛ではなく、恭順を示しているとされる。

 では、人間の女性にとって性行為は、男性への恭順にあたるのか。

 愛し合うカップルや夫婦は平等だとしても、男性のイチモツを挿入されるということは、自身の体内に男性の身体の一部を入れる、つまり、異物を自身に侵入させることになる。

 女性はその硬直したものが体内に入ると、締めつけられるような何となくむず痒く、深く挿入されれば、串刺しにされたような感じがするという。

 だが、その圧迫感は、耐えがたい不快なものといった感覚ではなく、愛情と信頼があり自分の尊厳を認めてくれる愛しいパートナーに貫かれたとしたら、意識が高揚するとともに、その一体感は安らぎと微睡みの中で、深奥なる幸福感が伴うらしい。

 男女の恋愛の過程では、しばしば多かれ少なかれ意図的な騙し合いがあるのは一般的なことといえよう。

 男は性交するまで全力疾走で攻めまくり、攻略したら終了という展開もあれば、一方で結婚適齢期の女性は生涯、金銭的に自由な生活を保証してくれる男性獲得のため、大胆に作戦を実行することもあるだろう。

 男と女の親密な関係には、いずれ性行為が伴うことになり、愛のある性行為は、男女の最も深い領域のコミュニケーションといえよう。

 だが、性交自体、愛情よりも複雑な側面をもっている。

 愛もセックスも生身の人間の間で生じるものだが、「性行為=愛」と互いに信じたとしても、人はどれほど愛した相手であっても、心と身体のすべてを相手に支配されたくはないはずだ。

 たとえ愛情が通い合うカップルで、性交の快楽に恍惚としたとしても、のちに激しい敵意が生じることもありうるのだ。

 女性の性器は、心の住居と表現する人もいる。性器を閉ざしている女性は、男性器の挿入が恐怖や屈辱を感じることによるものかもしれない。

 いまの若年層には、性に対して汚いとか暗いといった否定的なイメージが浸透しているという。

 そうした観念が身についてしまえば、生涯にわたり、その影響が及ぶ場合もあるだろう。

 若者が、性に対する嫌悪感が固まってしまえば、「性的な触れ合いは人間的な和やかで信頼と悦びの交流であり、2人の関係をより親密に深化させる」ということに気付かず過ごすことになるかもしれない。

 夫婦やカップルといった親密な人間関係は、人と人との触れ合いが基本である。それは、時として言葉がなくても意思を通じさせることもある。

 人は互いに触れ合うことで、肉体を通じて会話を交わすことは、最も奧深いコミュニケーションなのだ。

 国立社会保障・人口問題研究所の、「出生動向基本調査(2021年6月)」によれば、大学生まで異性との交際経験が全くない人、交際を望まない人、そしてセックスしたことがない若者が増加傾向にあるという。

 若年層の恋愛をしたことがない者が、年齢を重ねて結婚適齢期出産適齢期となったとしても、セックスに対する無関心と消極性が、いきなり高い関心をもって活発となるとは考えにくい。

 性に無関心、または嫌悪感がありセックスを避けるようになれば、晩婚化、非婚化が進み、少子化に拍車がかかり、高齢者の比率が増加する。

 となれば、人材不足とされている介護や看護の問題が拡大することにもなりかねない。

 さすれば、その財源である社会保障費の負担が若い勤労者に重くのしかかることになり、現在生じている社会の歪みが、さらに拡大することが予測される。

 国立社会保障・人口問題研究所が実施した出生動向基本調査(2021年)によれば、18~19歳の独身の男女で、今まで一度も異性の恋人と恋愛をしたことのない割合はともに半数で、20歳以上の男性では40%近く、女性の30%前後が恋愛経験なしという。

 また、男女ともに3人に1人は「特に異性との交際を望んでいない」と回答。18~34歳の未婚者を対象に実施した調査では、交際相手がいない割合は女性で約50%、男性は61%。

 交際相手がいない男女の約半数弱が、異性との交際を特に望んでいないと答えている。

 日本家族計画協会の16~19歳の若者を対象とした調査では、男性は36%、女性は59%がセックスに関心がない、または嫌悪感がある、との報告がある。

 セックスの経験がない割合は、20~24歳が52.6%、25~29歳が35.0%。30~34歳は39.7%。この数字はかなり高いようにも映る。

 若年時に培われた、セックスに関心がない、嫌悪感があるといったネガティブな印象を引きずることにより、未恋愛、未性行為、未結婚が増加傾向となったのではないだろうか。