イスラエルとイランの関係を悪化させるヒズボラ
イスラエルは核兵器を開発。イランも核兵器開発を目指した。中東における二大軍事大国として不俱戴天の敵となった。
さらに、イスラエルとイランの関係を悪化させているのが、レバノンのヒズボラの存在である。
ヒズボラは、1982年に結成されたイスラム教シーア派の政治・軍事組織である。レバノンにおいて、イラン型のイスラム原理主義国家の設立を目指している。イランが積極的に支援していることは言うまでもない。
ヒズボラとは、アラビア語で政党を意味するヒズブと神を意味するアッラーが合わさった言葉で、「神の党」などと訳される。ヒズボラは、レバノンに侵攻する、しようとするイスラエルに対して、たびたび攻撃をしかけている。ヒズボラとイスラエルとの関係は最悪に近い。
これらの点から、イランとイスラエルの関係は、イラン革命後は修復が極めて困難なほど、複雑な要因で悪化していると言っていい。
今後の展開はどうなるだろうか。
イスラエルに強い影響力を持つ米国とイランの関係が良好にならない限り、イスラエルとイランの関係は変わらない。現在の体制では米国とイランの関係改善は画餅であろう。
ただ、イランの核開発をとん挫させる核合意を成立させたオバマ大統領の事例もある(トランプ氏によって反故にされてしまったが)。困難な外交交渉の末に核合意を成立させたオバマ政権は画期的と評された。
イスラエルとイラン両国の関係が悪いのは過去50年ほどに過ぎないことを認識するべきであろう。中東の長期的な安定のため対話を重視する指導者が生まれてほしいと思う。
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山中俊之(やまなか・としゆき)
著述家/芸術文化観光専門職大学教授
1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。
2010年、企業・行政の経営幹部育成を目的としたグローバルダイナミクスを設立。累計で世界96カ国を訪問し、先端企業から貧民街・農村、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。京都芸術大学学士。コウノトリで有名な兵庫県但馬の地を拠点に、自然との共生、多文化共生の視点からの新たな地球文明のあり方を思索している。五感を満たす風光明媚な街・香美町(兵庫県)観光大使。神戸情報大学院大学教授兼任。
著書に『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)。近著は『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)。