- 中東を歴訪した岸田首相は、中東諸国に脱炭素化技術での連携強化を呼びかけた。
- 産油国で知られる中東だが、経済多角化の必要性に迫られている上に、砂漠や荒れ地が多く、再生可能エネルギーの展開に向いている。
- 同様に、砂漠や荒れ地の多いアフリカも、化石燃料への依存度が高くないだけに、脱炭素が一気に進む可能性がある。
(山中 俊之:著述家/国際公共政策博士)
サウジアラビア、アラブ首長国連合(UAE)、カタールを訪問した岸田首相。日本が中東諸国に打ち出した脱炭素の提案。多くの化石燃料を排出する石油産油国に脱炭素を促す点に、疑問を感じた方もおられるかもしれない。
実際は、中東産油諸国においても脱炭素は重要な課題である。長きにわたって石油に依存をしてきたがゆえのつけとして、経済多角化を進める必要にも迫られている。
世界最大の原油産出量を誇るサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、水素エネルギーを手掛ける新興企業に積極投資をしている。
2022年にはサステナビリティレポートも公表。同社のアミン・ナセル社長は、「2050年までに事業活動からのCO2排出量ネットゼロを達成する」と語っている。
中東産油国を脱炭素・再生可能エネルギーの視点で見ていくことが今後は重要になる。
本稿では、中東産油国の脱炭素化の現状とそこから得られるビジネスパーソンとしてのヒントについて考えていきたい。
中東産油国が脱炭素に本気で取り組んでいる理由は以下の通りだ。
理由の第一は、いうまでもなく国際社会からの脱炭素への圧力だ。
私がサウジアラビアに勤務していた1990年代から、国際社会では化石燃料の排出については厳しい指摘があった。
しかし、当時は欧米先進国と中東産油国との間に問題意識のギャップがあった。国際会議で、炭素排出に対して課税する炭素税などの動きにサウジアラビアが強く反対していたことを思い出す。
1990年代よりもはるかに気候変動問題が深刻化してきたことに加え、2015年のパリ協定で潮目が大きく変わった。
サウジアラビアをはじめ中東産油国もパリ協定の締結国だ。国別の脱炭素への貢献が求められている。サウジアラビア政府も、サウジアラムコのような石油企業も脱炭素、CO2排出量ネットゼロを目指すことを公言している。