- シリコンバレーに次ぐ起業の整地として知られるイスラエルに、ハマス・イスラエル紛争が影を落としている。
- 改めて浮き彫りになった安全保障上の懸念に加えて、司法権の独立を脅かす極右政権の政策も大きなリスクだ。
- 仮に地上戦に突入すれば、海外のビジネスパーソンだけでなく、イスラエルの優秀な人材も同国を離れかねない。
(山中 俊之:著述家/国際公共政策博士)
「エコシステムに乗っかってビジネスを拡大させたい」。数年前に、テルアビブを訪問した際、同地の起業家は熱く語っていた。
ご存じの通り、イスラエルは起業大国だ。世界のユダヤ人ネットワークやユダヤ人と関係の深い米国人投資家などが資金調達をはじめとした起業支援、事業の発展支援をしている。
サイバーセキュリティ、ヘルスケア、農業などの分野で世界最先端の技術の企業が多く生まれている。地球環境に優しい培養肉の開発でも世界をリードしている。
シリコンバレーに次いで、世界の投資家の注目を集める地域と言っても過言ではない。
そんな起業家の聖地とも言えるテルアビブからわずか70キロの場所で、大きな火薬庫が爆発しかけている。言うまでもなく、パレスチナのガザ地区を拠点とするハマスのイスラエル攻撃に対応したイスラエルのハマスせん滅作戦のことだ。
「熱い思いを語っていた起業家は、今ごろどうしているだろうか」との心配が尽きない。
本コラムでは、過去数年間にイスラエルで起きてきた事象も含め、武力紛争によって起業大国イスラエルがどのような影響を受けるのかについて考えていきたい。