台湾有事を巡る高市首相の発言で日中関係は緊張状態にある(写真:ロイター/アフロ)
(山中 俊之:著述家/起業家)
12月初旬に上海を訪問した。高市首相の台湾有事に関する発言により日中関係が緊迫化しており、中国政府からは中国人の日本への渡航自粛も呼びかけられる中ではあるが、飛行機は満席に近かった。
感触としては8割が中国人、2割が日本人というところであろうか。中国の航空機なので中国人の割合が多いのは当然であるとは思う。減便の影響で客が流れてきている面もあるであろう。
その点を考慮しても、比較的多くの中国人が引き続き日中間を行き来していることは間違いないと思われた。
上海に到着後、自動販売機で飲み物を買おうとした時、「うまくいかないな」と思わず口に出してしまった。インストールしたWeChatPay(ウィーチャットペイ)を使っても、自動販売機で購入ができなかったのだ。
他に数人の外国人観光客も同じ状況のようだった。
その時、ある中国人が近づいてきて助けてくれた。中国人であれば対処法が分かるのであろう。慣れていない外国人では対処法がすぐには分からないのだ。
よく知られるように、中国では、WeChatPayやAlipayといったデジタルペイメントが大変に発達している。中国渡航の際には、これらのデジタルペイメントをスマホに事前にインストールしておくことが不可欠だ。
しかし、そもそも短期滞在の外国人は使い慣れていないことや、外国人には利用制限がかかることなどから、うまく使えないことも多いのが現実だ。
最近、中国では観光地や国際会議場で外国人客を意識してキャッシュ対応力を高めていると聞く。
本年開催された大阪・関西万博で外国人を案内した際にも、「会場では現金が使えない」というと、「ええっ。それは困る」という反応があった。会場で使用可能なデジタルペイメントをインストールしている外国人客ばかりでないからだ。
デジタル化は外国人やハンディのある人(例えばスマホの細かい手を動かす操作ができない人)などには使いにくいこともあることは、中国に限らず、社会全体として認識しておくべきだ。
上海視察の目的の一つは、緊迫化した関係にある中国の現状を探ることだった。