中国への訪問経験が少ない高市首相とその周辺
高市首相の政策に関する書籍は筆者も何冊も熟読しており、安全保障について十分な知見を持っていることは理解する。
しかし、筆者が調査した限り、高市氏は中国への訪問経験は見つからず、日本や第三国を含めても中国の政府高官など要人との会談は、10月の韓国での習近平国家主席との会談を除き、ないように思われる。
高市氏に近いとされる政治家や有識者数名についても調べたが、中国への渡航経験や要人との会談経験はないか過小な場合が多い。
前中国大使の垂秀夫氏は、著書『日中外交秘録』において、「台湾を2023年に訪問した国会議員は100人以上にのぼる。一方、中国には10人も行っていない。(中略)国会議員という立場で日本外交を考えるならば、まずはアメリカと中国だ」との旨を述べている。
彼を知り己を知れば、百戦殆(あやう)からず。孫子の兵法でも言われる通り、自国に加えて、相手国を知らずして外交はできない。安全保障上の懸念があるがゆえに、中国の社会経済を含めた実情を知るための継続的な訪問や要人との対話が必要だと思う。
中小零細企業を経営する私が問題にしたいのは、中国と取引がある中小零細企業への配慮が足りないと思う点だ。
国際情勢が緊迫化する中、一国・一地域だけに頼った事業はリスクマネジメントができていないと言われる。中国との関係についても顧客や調達先、サプライチェーンを多角化すべきだという議論は、経営論としてはまさに正論だ。
しかし、このような議論は、ある程度の規模、50億〜100億円程度以上の売り上げのある会社に当てはまることではないか。売上高が10億円以下の企業が中国関連事業に多くの投資をすでにしている場合、今回の緊迫化が長期化すると事業の切り替えなどができず持続的な経営が困難になる例も出ないとも限らない。