アルメニアのエレバン駅(写真:myuta_ibrk/イメージマート)
「アルメニアロビー?ユダヤロビーなら聞いたことがあるけど、アルメニアロビーって聞いたことがないな。そもそも、アルメニアってどこだっけ?」
アルメニアと聞いて、そう思う人が多いかもしれない。もっとも、アメリカ議会では、ユダヤロビーに次ぐレベルの影響力を持っているとも言われる。同ロビーはアルメニア系米国人の参加率が高く、資金力も豊富だ。対トルコ政策など米国の中東外交の関与は大きい。
西にトルコ、北にジョージア、東にアゼルバイジャン、南にイランと接するアルメニアは、人口300万人の旧ソ連のキリスト教国だ。
首都エレバンに遠くからでも目立つ大きな像がある。その像は女性が剣を持って、ある方向を強く見つめている。その厳しい目線の先にあるのは国境の先にあるトルコだ。地元の人によると、剣を横向けにして持っていることで十字架をも暗示しているという。
筆者は100カ国を超える国々でさまざまな歴史上の遺跡・建造物をみているが、アルメニアのこの女性像ほど、他国への敵意を感じさせる遺跡・建造物は見たことがない。その背景には、中東で長く強大な勢力であったイスラム教のオスマン帝国、そのオスマン帝国によって第1次大戦時に大量のアルメニア人が虐殺されたことがある。
現在のアルメニアの地域は、オスマン帝国とロシア帝国の狭間にあり、第1次大戦で激烈な戦闘地になった。
その戦闘の過程で数多くのアルメニア人が強制移住をさせられ、一説に100万人とも言われるアルメニア人が虐殺された(諸説あり。なお、アルメニア人とオスマン帝国との係争は19世紀末から顕在化して断続的に殺戮事件が起きていた)。
アルメニア側はオスマン帝国による組織的なジェノサイドであると主張している一方、オスマン帝国の後継国であるトルコは、ジェノサイドについて強く反対している。アルメニアとトルコは、不倶戴天の敵と言ってもよい関係にある。