世界を動かすアルメニアロビー

 アルメニアは、このジェノサイドを国際的に認めてもらうために各国で強力な反トルコのロビー活動を展開してきた。

 歴史的に、オスマン帝国、ロシア、ペルシャ等の係争地に住むアルメニア人は世界各地に離散(ディアスポラ)してきた。アルメニア国内人口の300万人を大きく上回る500万〜800万人とも言われるアルメニア人(アルメニア系)が国外にいる。

 米国では、Armenian National Committee of America(ANCA)などのロビー団体が、カリフォルニア州や東海岸を中心に影響力を持っている。組織力に優れ、米国のトルコ政策には大きな影響力を有しているのだ。

 ロビー活動が功を奏して、2021年にバイデン大統領(当時)は、オスマン帝国のアルメニア人虐殺をジェノサイドであると認定した。

 フランスでも強力なロビー活動を展開して、2010年代にアルメニア人虐殺を否定する言論を否定する法案が可決されたことがある(憲法裁判所が表現の自由の観点から違憲判決を出して無効化)。

 隣国イランにおいても、議会でイラン国籍のアルメニア人がマイノリティとして2議席を確保することが法制化されている。

 おおむね日本出身の日本人の国会議員で国会が構成され二重国籍が認められない日本の状況からは想定が難しいが、かつての母国のために政治的に活動する議員や政治団体の影響力は、世界の一部の国では特定の外交政策の意思決定において甚大だ。

 米国でのユダヤロビーはよく知られるところだが、その他にギリシャロビー、アラブロビー、韓国ロビーなど、一定の影響力を持っていることに留意すべきであろう。