やはり軽率だった高市発言

 街を歩いていて、特に反日的な雰囲気を感じる場面はなかった。入館審査でも、ホテルでも、お店でも、全体として支障はなくスムーズにことが運んだ。

 もっとも、現地のテレビ報道では、高市首相の発言に反対する日本人の抗議デモや南京虐殺問題など日本に関するニュースは多く放映されていた。日本の戦前の帝国主義と関連させた報道も目立った。

 今回の高市氏の発言をどのように捉えるべきか。

 安全保障に関する政策は、曖昧にすることが意味を持つと言われることがある。いわゆる曖昧戦略(Strategy of Ambiguity)のことだ。手の内を見せないことで相手の警戒感を継続させることで安全保障を確保する。

 安全保障に関して、さまざまな可能性をシミュレーションすることは当然である。私も外務省時代に軍事・安全保障に関連するシミュレーションの議論に参画したことはある。

 日本の領土から100キロ余りに位置する台湾における有事が、日本の安全保障に影響があることは論をまたないと思う。しかし、内々にシミュレーションすることと、対外的に、首相が発することとは全く意味が違う。

 外務省が準備した資料になく、内閣や与党の協議で合意をとったわけでもない今回の発言はやはり軽率な面があったと言わざるを得ない。