参加者を飽きさせない仕掛けが豊富で、大自然を満喫

「廃線ウォーク」では、運行当時の上下線の呼称を使用し、例えば「横→軽下り線踏破」などとイベントにタイトルを付けている。「横→軽下り線踏破」の場合、早朝の「峠の湯」集合を避けているので、首都圏から日帰りも可能だ(峠の湯には駐車場があり、JR利用の場合、横川駅から徒歩もしくは駅前の「碓氷峠鉄道文化むら」のトロッコ列車利用)。

 廃線エリアは「峠の湯」の間近にあり、ヘルメットと懐中電灯を借りて早速線路を歩く。バラストと呼ばれる線路に敷き詰めた石が運行当時のまま残っているので、その上を歩かず、枕木の上やトンネル内のコンクリート保安路を歩くようガイドから案内がある。

廃線沿いにある本物のキロポスト

 線路際に距離を示すキロポストなどの鉄道標示も残る中、2番目のトンネルが1215mと区間きっての長さで、しばらく歩くと前も後ろも真っ暗になる。

 私は「碓氷峠トンネルツーリズムプランナー」という呼称を頂いて年に2回ほど特別ガイドを務めているが、このような“闇”を体験できるトンネルは全国でも極めて稀なので、参加者の同意を得た上で“消灯体験”をする。

 すると、闇の中で何の音も聞こえない、という、都会ではまずもってない体験ができる。碓氷の地山(じやま)の中で、グループの他に誰もいない極上の闇の空間を味わえるのだ。

極上の長い闇が続く下り第2トンネル

 下り第2トンネルを出ると、次の第3トンネルまでの間、高度のある長いコンクリートの橋梁上を歩く。ここで線路の上に腰かけて一旦休憩。するとはるか先に、明治中期に開通した旧線(アプトの道)の碓氷第三橋梁(めがね橋)がくっきりと見える。周りは360度碓氷峠の大自然が広がり、春は新緑、秋は紅葉が見事だ。

 素晴らしいシャッターポイントにさしかかったことを上原さんらガイドがピンマイクで自然な感じで教えてくれる(参加者はイヤホンを配布される)。