今のところ、イランが核武装する気配はないが、核兵器をすでに保有しているとされるイスラエルに対抗するために、核武装という選択肢が浮上する可能性はある。

国際社会の圧力は効くか

 4月17日、ドイツのベアボック外相とイギリスのキャメロン外相がイスラエルを訪れ、ヘルツォグ大統領やネタニヤフ首相、カッツ外相と会談した。英独の外相はイスラエルに自制を求めたが、ネタニヤフは、「我々は自ら決定を下し、自国を守るために必要な全てのことを行う」と明言した。

 G7やEUは、イランに対して制裁を科す予定である。これに対して、ロシア、中国、トルコなどは、西側のイスラエル寄り姿勢を批判している。

 イスラエルがイランへの報復に踏み切れば、アラブ諸国からも反発を受ける。ヨルダンは、イランからの攻撃を守るためにイスラエルを支援しており、そのため、アラブ人から批判されている。イスラエルがイランに反撃すれば、これら穏健派アラブ諸国との関係が悪化する。これら諸国が望んでいるのは、戦争が拡大しないことである。

【舛添要一】国際政治学者。株式会社舛添政治経済研究所所長。参議院議員、厚生労働大臣、東京都知事などを歴任。『母に襁褓をあてるときーー介護 闘いの日々』(中公文庫)『憲法改正のオモテとウラ』(講談社現代新書)『舛添メモ 厚労官僚との闘い752日』(小学館)『都知事失格』(小学館)『ヒトラーの正体』『ムッソリーニの正体』『スターリンの正体』(ともに小学館新書)、『プーチンの復讐と第三次世界大戦序曲』(インターナショナル新書)『スマホ時代の6か国語学習法!』(たちばな出版)など著書多数。YouTubeチャンネル『舛添要一、世界と日本を語る』でも最新の時事問題について鋭く解説している。

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