イスラエルの抑止力低下

 今月13日から14日にかけてのイランによる報復によって、イスラエルは、現有の軍事力ではイランからの攻撃を抑止できないという厳しい現実を突きつけられた。

 世界の関心事は、イスラエルがどのような報復攻撃を行うかということにある。バイデン政権は、イスラエルに報復しないように求め、アメリカが反撃に参加することはないと釘を刺した。

 イスラエルの戦時内閣は、何らかの報復攻撃を行うことは決めたが、詳細については意見の一致をみなかった。また報復するにしても、ユダヤ教の「過越の祭」(今年は4月23日〜29日)が終わるまでは、イスラエルはイラン攻撃をしないだろうと観測されていた。

 だが19日、恐れていた事態となった。イランに対してイスラエルがミサイル攻撃を行ったと報じられたのだ。攻撃との関連は不明であるが、イラン中部のイスファハン州北西で爆発音が聞こえたとの情報もある。この地域には空港や軍事施設があり、ナタンズには重要な核関連施設がある。

(共同通信社)

 これまでイスラエルは、イランが支援する武装組織や周辺諸国にあるイラン関連施設への攻撃は行ってきたが、イラン領土を直接攻撃したことはない。もし、直接攻撃に踏み切ったのであれば、際限の無いエスカレーションを招く危険性がある。

 しかし、自国領土が直接攻撃されたのに、相手国領土への攻撃を控えるという選択をすれば、国内の右派や強硬派から猛反発を受けるのも必至だ。ネタニヤフ政権は、これら過激派と連立を組んでいる。そこもネタニヤフには悩ましいところだろう。