韓国政治の漂流
尹錫悦大統領は原理原則を重視する人だ。レームダックになり政治が漂流することは阻止しようとするだろう。
今後まず取り組まなければならないのは医師会、研修医らのストを収拾することだ。総選挙の1カ月前に始まったストが長引けば、選挙に悪影響を及ぼすことは予見可能だったが、筋を曲げなかった。今後の尹政権の政治もこの原則で対応するのだろうがそれでストを収拾できるのか。
いずれにせよ、重要な政策課題が停留することになるのではないか。国内政治について見れば、与野党ともに決め手を欠き、何もできない状況が続くだろう。これは韓国社会にとって不幸なことだ。
国民の力にとっては、いかに国民の信頼を回復していくかが課題である。まず総選挙の責任者として、韓東勲非常対策委員長が辞意を表明した。大統領室の首席秘書官以上も辞任する。今後何より、経済の回復、国民の生活の安定に集中していかざるを得ず、革新系が支配する、労働や教育の改革は後回しになるだろう。革新系が支配する裁判所の人事改革も遅れるはずだ。韓首相が辞任した後の首相をどうするのか。当分政策を遂行する態勢にはならないかも知れない。
外交は大統領の権限である。日韓関係の改善は尹政権の成果である。これを変えることはないだろう。
しかし、歴史問題などでは尹政権の方針に対する反発がより強く感じられるようになるはずだ。尹大統領としても、日本側にもっと譲歩してほしいとの期待が高まってくる可能性がある。
そのような時、日本も岸田政権が仮に退陣するようなことになれば、日韓関係の安定的発展に支障が及ぶ可能性もある。
尹大統領の政策の基本的方向は変わらないであろうが、大統領の支持基盤が揺らぐことで尹政権がレームダック化していく可能性が大きくなってきた。日本としては韓国の政局の動きを見極めつつ、米国などとの連携を図り対応して行く必要がある。
【武藤正敏】
外交経済評論家。元在大韓民国特命全権大使。横浜国立大学卒業後、外務省入省。アジア局北東アジア課長、在オーストラリア日本大使館公使、在ホノルル総領事、在クウェート特命全権大使などを歴任ののち、2010年、在大韓民国特命全権大使に就任。2012年退任。著書に『日韓対立の真相』、『韓国の大誤算』、『韓国人に生まれなくてよかった』、『文在寅という災厄』、『文在寅の謀略 すべて見抜いた!』(以上、悟空出版)、『「反日・親北」の韓国 はや制裁対象!』(李相哲氏との共著、WAC BUNKO)がある。
■著者のその他の記事
◎「お先真っ暗」状態を抜け出せるか、韓国が来年直面する4つの難題(2023.12.26)
◎日中韓外相会議が立証、日本の国益のために必要なパートナーは中国でなく韓国(2023.12.6)
◎党内造反で「李在明」逮捕同意案が可決、身内から見限られた反日政治家の落日(2023.9.23)
◎処理水のデマで中国と共に日本攻撃する韓国野党、国際的理解を得られず赤っ恥(2023.9.12)
◎キャンプデービッド会談にまで漕ぎつけた尹錫悦の日米韓協力体制再構築の執念(2023.8.18)
◎韓国政界で「デマ」「陰謀論」が大手を振って歩ける構造を分析する(2023.7.28)
◎IAEA事務局長もあ然、韓国野党「処理水、日本人に飲料用に勧めたら」発言(2023.7.14)
>>もっと読む