ハンスト13日目となる9月12日、北朝鮮への不正送金疑惑の取り調べのため水原地検に出頭した共に民主党の李在明代表。ハンスト中のためなのか、髭は伸ばしっぱなしになっている(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国国会は9月21日、検察から提出されていた最大野党「共に民主党」代表・李在明氏に対する逮捕同意案を採決し、賛成149、反対136、棄権6、無効4で可決した。逮捕状請求の理由は、北朝鮮に対する不正送金に関与した疑いや「柏峴洞(ペクヒョンドン)開発事業特恵疑惑」によるもの。

 可決に必要な出席議員の過半数は148である。つまり政府・与党・検察にとってはわずか1票差での勝利となった。投票に参加した民主党議員は167名。つまり民主党の中から30名ほどの造反者が出たことを意味する。朝鮮日報は与党や与党に近い政党・無所属議員が賛成票を投じたとすれば少なくとも「野党29人が反乱」したと見られる、と報じている。

李在明氏逮捕に向け大きな前進

 国会での同意案可決を受け、今後逮捕状発布の是非を判断する裁判所の令状審査が実施される。

 実は裁判所の逮捕状審査は発布が認められないケースも2割近くあり、事態の推移は未だ不透明な部分はある。しかし、朝鮮日報が指摘するように、李在明氏はこれまで、疑惑について「関係していない」「知らない」との説明に終始しているが、それが事実でないことも関係者の証言から判明している。

 裁判所の令状審査においては、逃亡や証拠隠滅の可能性の有無などが検討される。

 韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官は、国会で逮捕の必要性について「多数の関係者が組織的に関与しており、共犯者に対する懐柔や圧迫を通じた証拠隠滅の懸念が非常に大きい」と説明した。実際、李在明氏にはこれまで自身の事件への関与を隠蔽しようとしてきた経緯があり、李在明氏にとって有利な状況とはいえない。

 そう考えれば検察は、「李在明氏逮捕」に向け最大の関門を突破したことになる。