また、韓東勲非常対策委員長も総選挙の責任を取り、辞任する意向を表明した。これによって今後、国民の力の中で大統領選挙に向けた主導権争いが本格化するのではないか。もともと団結力の弱い保守系政党にとってこれは痛手だ。
また、韓悳洙(ハン・ドクス)、首相、国家安保室長を除く首席秘書官以上の大統領室高官も辞意を表明した。こうなれば与党内での尹大統領への支持基盤が弱まることは必定である。
前述したように、尹大統領は原理原則を重視する人だけに、これまでの政策を大きく曲げることはないと思われる。しかし、尹大統領と政治生命を共にしようとする政治家が少なくなれば、それだけレームダック化が進むことになる。
韓国政治は「一寸先が闇」の時代になったと言える。
革新系野党の大勝利、なぜ起きたか
3月初旬ころまでは、韓国の世論調査会社は与野党の戦いぶりはほぼ互角と分析していた。専門家の中には保守有利と見る向きもあったほどだ。
というのも、最大野党・共に民主党の国会議員候補者選定の過程で、李在明(イ・ジェミョン)代表が自身に近い人を優先し、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領に近い人を排除したことで党内が分裂。一時は政党支持率で国民の力に抜かれる場面もあった。
ところがそこに出てきたのが曺国氏の祖国革新党だった。ここが文在寅氏に近い人を吸収して比例代表の候補者に擁立していったのだ。
その結果、革新系は党勢を盛り返した。

祖国革新党には、不正疑惑が取りざたされる候補者が多い。自民党の政治資金還流問題など不正疑惑に厳格な日本では曺国氏の政党が選挙戦の終盤で比例区の支持率トップ争いを行うまでに伸びることは理解できないだろう。