日本はガイドラインで事業者に自主的な取り組みを促す

 AI規制に関する日本の取り組みはどうなっているでしょうか。

 これまで、総務省の「AIネットワーク社会推進会議」と経済産業省の「AI事業者ガイドライン検討会」が軸となって、基本的な考え方や具体的対応策を練ってきました。2023年夏に広島で開催されたG7サミット(主要国首脳会議)では、AI規制の国際ルールを協議していく「広島AIプロセス」が合意。日本は議長国として取りまとめに当たりました。

 現在は総務省・経済産業省が中心となって作成した「AI事業者ガイドライン案」が公表され、最終的な詰めを行っている段階です。

 日本の基本姿勢は、EUのように罰則を伴った法規制ではなく、事業者の自主的な取り組みに依拠するというものです。

 法的拘束力のないガイドライン(案)では、①事業者の自主的な取り組みを支援、 ②国際的な議論との強調、 ③利用者にとってのわかりやすさ―という3点の方針を明示。事業者に共通する課題として、偽情報対策などの「人間中心」、偏見や差別をなくす「公平性」、学習データの正確性を期す「安全性」など10項目を整備すべきとしています。

出所:総務省・経済産業省の資料『「AI事業者ガイドライン案」に対する」ご意見及びその考え方』より
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 ガイドライン案については、今年1~2月にパブリックコメントも募集され、約4000件の意見が集まりました。このなかでグーグルやソフトバンクなどの事業者は「過度に法令による規制等が適用されることは生成AIの活用やイノベーションを阻害する」として、法的拘束力を求めない日本政府の姿勢を支持しています。一方では偽情報や犯罪に利用される危険性などについての具体的な対応策に欠けているとの指摘もありました。

 AI技術は日進月歩ではなく、それこそ分単位・時間単位で進歩を遂げています。おそらく10年前には今の状況を多くの人が正確に予測できていなかったでしょう。規制と活用をめぐる動きも今後は分単位・時間単位で進んでいくことは間違いありません。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。