中国は政府批判の押さえ込みが目的

 EU以外の国々では、どんなAI規制が進んでいるでしょうか。

 実は、EUより先にAI規制を法制化した国があります。中国です。

 2023年8月にAI管理規則をつくり、「国家や社会制度の転覆を図り、国家と社会の安全をリスクにさらす情報」などの情報を生成AIで発信することを禁じました。EUのAI規制法は自由と民主主義を守ることを眼目にしていますが、中国では政府批判や中国共産党への反対意見などを押さえ込むことが主目的になっています。

 米国では2023年10月、バイデン大統領がAI規制に関する大統領令に署名し、管理に乗りだしています。ポイントは、AIの開発企業は政府と重要情報を共有しなければならないということ。一般公開される前に安全性のテストも義務付けられ、開発途中であっても政府に重要情報を通知することが求められます。

 また、虚偽情報の拡散を防ぐため、生成AIが創り出した動画や音声については、利用者が判別できるようにしなければなりません。「電子透かし」(digital watermark)技術などを用いて政府と企業が安全性を保証する仕組みも整えていくことにしています。

 こうした方針に基づき、バイデン大統領は今年2月、IT企業やAI開発企業など200社以上が参加する共同事業体を設立すると発表しました。米グーグルやアップル、オープンAIなどのほか、金融大手のJPモルガン・チェースなども参加しています。