北朝鮮は最近、金与正党副部長や崔善姫外相の談話で、外交的に日本に揺さぶりをかけてきている。
併せて軍事演習を写真などで見せつけ、威嚇を行っている。北朝鮮ではミサイル開発が進み、その脅威は増加している。
しかし、一方で通常戦力を使った演習を見ると、発表している内容と写真とでは大きな違いがあり、現代戦争を意識した実戦的な演習ではないことが分かる。
それらの実態について、空挺作戦演習を例にとって考察し、解説する。
北朝鮮が今年3月16日に公表した空挺(直訳では、「航空陸戦兵」)作戦軍事演習について、発表している内容と写真を見ると、勇ましく威嚇しているようだが、実際は作為的であり非実戦的なものである。
今回、北朝鮮軍の空挺作戦に注目した理由は、私が自衛隊の空挺部隊(第1空挺団)に所属し、空挺降下を経験したからだ。
また、小隊長を経験し、司令部においても空挺作戦について学んだことがあるからだ。
その経験から、北朝鮮軍の空挺作戦の写真を見て、合成写真であることや非実戦的な内容が多く含まれることに気付いた。
1.韓国への侵攻想定を強調する空挺作戦演習
朝鮮中央通信が3月16日に伝えたところによれば、金正恩委員長が3月15日、朝鮮人民軍の各航空陸戦兵部隊の訓練を指導したという。
空挺兵を乗せた輸送機が訓練場の上空に飛来し、戦闘員たちが仮想敵陣に降下した。
そして、この訓練は、仮想的な敵の主要軍事対象物を一気に制圧する空挺兵の訓練であった。
これは、今、命令が下されれば、直ちに敵の地域を一撃のもとに占領する戦闘能力を誇示したものであるという。
さらに、「常に、戦争と直結した実戦の訓練であること、有事の際に生死を決する峻厳な決戦場で戦って勝利することなど、戦争の準備をしておかなければならない。戦争準備の完成に引き続き拍車をかけていかなければならない」という。
ここでは、戦争と直結した実戦訓練でなければならないことを強調しているが、公開している写真を見ると、米軍や自衛隊の空挺部隊の訓練とはかなり違いがあり、実戦的だとは到底思えないことが多かった。