ウクライナ侵攻前の2021年、年次教書を発表するプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 今回のロシア大統領選挙では、ウラジーミル・プーチン大統領が圧倒的に勝利することは間違いない。

 選挙結果の数字は国民の本当の気持ちを表しているのか。また、政権要人もプーチンを心から支持しているのか。私には大きな疑問がある。

 市民の思いについては、JBpress「逮捕を恐れないロシア国民、ナワリヌイ氏の墓地に献花絶えず」(2024年3月15日)に記述した。

 2月29日、プーチン大統領は2時間ほど年次教書の説明を行った。

 説明するプーチンの顔には、ウクライナ戦争の戦果についてロシアが主導権を握っていると言うほどの感じはない。

 政権要人や支持者たちの顔には、ロシアのGDP(国内総生産)や企業利益がプラスに転じたことに、希望を持っている雰囲気はなさそうだ。

 今年の年次教書演説は、2018年に首相から大統領としてプーチンが再登場してきたときの大統領演説と年次教書を聴講している政権要人や支援者たちの雰囲気とが全く違っている。

 2018年では、聴講している要人などに笑顔があり明るい雰囲気だった。

 ところが、今年の年次教書演説の時は始まりから途中の拍手、終わりの拍手の時であっても特別な人物の数人を除いて笑顔は全くなく、暗い表情であった。

 異常な会場の雰囲気であったと言ってよいだろう。

2018年(上)と2024年(下)の演説時の聴講者の雰囲気

出典:ロシア政府公表2018年と2024年(以下同じ)

 プーチン氏の年次教書を聴講している政権要人や支持者の代表は、どのような気持ちでいるのかを、ロシアが公開した映像で分析したい。

 特に聴講者全体、トップレベルの政権要人の列、軍人の列、支持者の代表の列に区分して行う。

 この中でも、著名な人物の表情の心理を分析したい。

 ここで使っている写真は、ロシア政府が公開している動画の一部分を筆者が切り取ったものである。

 これらは全体的に、プーチン氏が話す内容と同様に、映し出している場の構成などは、政府の作為的なものであろう。だが、聴講者の心理から現れる表情は、政府の作為的なものではなさそうだ。

 その表情は、政府のコントロール下にはない。

 もし政府が一時的にコントロールできたとしても、約2時間という長い時間の中には、プーチン氏が話す内容に対して、本心が表情に出ていると考えてよいだろう。