1.2018年よりも下を向き、自信のない表情

 2018年の2回の演説の動画を見ると、プーチン氏の顔には自信があり、笑顔も見えた。カリスマ性もあった。

 ロシア政権内部や支持者たちは、淡々として演説をするプーチン氏の姿に、力強く明るい希望のようなものを感じ取ったことだろう。

 だが、2024年2月に演説した際のプーチン氏の顔は、2018年に比べ斜め下を見ている時間が長い。

 咳払いが多く、睨みはあるが自信がある表情ではない。

 聴講する政権要人の反応を見て、感じ取っているものもあるはずである。プーチン氏の姿からは、カリスマ性が消えた。

2018年(左)と2024年(右)の演説時の表情

 ウクライナ侵略について、「主導権を握り、新たな領土を解放した」と言うが、実際では両軍が戦っている戦線は膠着状態であり、ロシア軍による攻撃前進が進んでいるわけではない。

 また、無謀な攻撃が多く損害が大きい。

 ウクライナ侵攻については予想外の戦況となっていると感じているのは、プーチン自身であろう。

 損害については明らかにしないし、そのことを明らかにした者は、殺されたり自殺を強要されているようだ。

 フィンランドやスウェーデンがロシアの脅威を感じて、NATO(北大西洋条約機構)に加盟した。結果的にNATOが拡大した。

 その理由は、ロシアがウクライナに侵攻したことによるものである。侵攻しなければ、ロシアへの脅威は増加しなかったはずである。

 戦況によっては、NATOが介入する恐れも出てきた。その結果を受けて、核戦争の可能性も出てきた。

 これらの結果を生み出したのは、プーチン氏そのものである。

 侵攻がこのような結果になると予想できなかったことになり、プーチン氏の心理は当然、明るくはない。だから演説中に余裕や笑顔はなかった。

2.聴講者全体の表情:暗く笑顔がなくなった

 2018年の時には、多くの聴講者には自然な笑顔があった。

 今回(2024年)プーチン氏の話を聞いて明るい表情の人は数えるほどだ。ほとんどが暗い。この2つの雰囲気を比較すれば一目瞭然、全く異なっている。

 おそらく、この不安な表情はプーチン氏が言っていることと現実は違う部分が多いと感じている人がほとんどだったためだろう。

 通常であれば演説の始まりや拍手をしている時は、明るい表情があってもいいはずだ。しかし、笑顔が見えたのはほんの一部(5人ほど)だけであった。

 今回の年次教書演説における聴講者の暗い雰囲気は、異様なものだったと言える。