4.政権中枢の要人は特定の人を除き暗い表情

 プーチン氏に最も近い要人であり、ロシアの実情を知っている人たちである。

 ドミトリー・メドベージェフ前大統領は1列目、国防大臣や外務大臣などは2列目である。2018年の年次教書演説とほぼ同じメンバーである。

 2018年の要人の顔には笑顔があった(注)。今回は、ほぼ全員が暗く、明るい表情の要人はいない。

2018年(左)と2024年(右)政権要人の雰囲気

注:2018年の映像は、演説が始まる前ではあるようだ。2018年には、映像の中に始まる前の明るい表情の場面が多く写されていた。2024年には、このような場面はない。

「ロシアは、今後どうなるのか。ロシアの将来に希望が見えない。この政権は耐えていけるのか。このままではダメなのでは」という不安の表情が見える。

 米欧との関係が悪ければ、これから訪れる未来が明るくないことを知っている。だから、全員が暗い表情になっている。

 私の推測だが、現政権の中枢にいる人たちは、ロシアの(苦しい・暗い)現状を知っているのだと思う。

 長時間ずっと見ていると、すべての要人が暗い表情だったが、メドベージェフ前大統領だけが、一瞬ではあるが、自信と余裕を感じられる表情を見せた。

 プーチン氏の演説を聞いていて、このような表情をする人は誰もいなかった。周りの要人とは全く異なる表情だったのは、なぜなのだろうか。どのような意味があるのだろうか。

聴講するメドベージェフ氏

 メドベージェフ氏だけが自信と余裕があり、明るい表情である理由は、プーチン氏が失脚、あるいは次の大統領として相応しくないと周辺が考えれば、次を担うことになるのはメドベージェフ氏だからだろう。

 彼は最も有力な後継者の一人と言われている。

「プーチンはいずれダメになる、次にロシアを背負い大統領になる(ロシアの本物のトップになる)のは、俺だ」という、思いがあったからだろう。この表情を表したのは一瞬だけであった。

 本音が漏れた瞬間だ。