5.威嚇どころか空挺作戦の未熟さを露呈

 次に、北朝鮮空挺部隊の空挺作戦の写真を分析する。

(1)空挺兵が数日間戦う弾薬等を携行していない

 空挺作戦は、重要施設襲撃や要人殺害のために小規模の空挺部隊で攻撃を行う場合、あるいは作戦の重要拠点(飛行場・橋梁等)を占拠するために中・大規模の空挺部隊で攻撃を行う場合がある。

 今回は大型の輸送機を使用していることから、中規模以上の空挺作戦の想定なのであろう。

 いずれにしても、地上部隊との提携や襲撃後の撤退などを想定すると、数日から1週間以上の期間、単独で作戦をしなければならない。

 そのため、空挺部隊、あるいは個人の空挺兵としては、その間の弾薬・食料・医薬品を携行しなければならない。

 例として、米軍の空挺部隊の演習時の写真5を見てみよう。

 数日間以上戦うための装備品を入れたリュックや無線機を携行している。これが普通のことだ。

 私が自衛隊第1空挺団に所属していたときには、重さ数十キロのリュックを股に挟んで降下し、引き続き訓練を実施していた。

写真5 米軍空挺兵が降下するために輸送機に搭乗している様子

右は戦闘行動中の空挺兵

 一方で、北朝鮮空挺部隊演習の写真6を見ると、それらの兵士は弾薬や食料を運ぶリュックを携行していない。

 また、個人が身近に身に着ける弾倉帯に弾倉が入っていない。

 彼らは身軽なのだ。必要な弾薬を持たないで演習することは、初歩レベル以下である。

 また、すべての兵士の写真を見ても、通信機を背負っている兵士はいない。これは、部隊間の連携が全くできないことの表われである。さらに、航空支援を行う部隊との交信もできないのである。

 このように演習はあまりにも初歩的なものであり、恐らく写真撮影用に演技したものだろう。

写真6 北朝鮮空挺兵の攻撃の様子

出典:朝鮮中央通信

(2)戦闘中の空挺兵の行動が非実戦的行動

 北朝鮮空挺兵が保有している弾倉は、銃に装着しているもののみである。これだと、たった30発の弾丸しか撃てない。

 これだけで何ができるのか。およそ、10~30分程度の戦闘しかできないだろう。

 射撃の姿勢であるが、写真の中に兵士が立ち撃ち、座り撃ち、伏せ撃ちの姿勢をとっている。

 このような平地であれば、敵から射撃を受ける程度によって、姿勢は変わるものである。1つの場面に3つの姿勢がいることは、写真撮影用の行動であるということである。

 北朝鮮兵が頭に被っているのが、旧ソ連時代の空挺兵のヘルメットである。現代戦では、米軍空挺兵(写真5)が被っているような暗視装置付き戦闘ヘルメットを装着しなければならない。

 軍事パレードでは、米軍同様のヘルメットを装着している(写真7)が、実際の演習では、古い装備のままだ。

 北朝鮮の個人装備品はパレード用であり、演習では実戦では使えない旧式装備である。本末転倒であり、いかに時代遅れなのかが分かる。

写真7 北朝鮮軍軍団のパレード(2021年1月)と個人装備品

(3)空挺作戦は、夜間降下を実施するのが普通だ

 空挺降下は、昼間に実施すると発見されて、短時間のうちに敵から攻撃されてしまう。

 特に、火砲による攻撃を受ければ、全滅の危機に遭う。写真8は、米軍が夜間降下を実施しているところである。

写真8 米軍82空挺師団の夜間降下訓練状況

出典:米軍82空挺師団公表資料

 空挺部隊は夜間に降下するとなれば、落下傘の色は、カーキ色か黒色でなければならない。

 空挺部隊の落下傘は、通常カーキ色で、特殊部隊の落下傘は黒色である。この色だと、星明りならほとんど見えない。

 落下傘が開くときに、バサーという音しか聞こえない。だから発見されないのだ。

 ところが、北朝鮮空挺部隊は昼間に降下し、引き続いて地上戦闘を行っている。

 落下傘が白色では、発見されやすい。シベリアのような氷原ではよいが、朝鮮半島での戦闘では、実戦的ではない。