2.大規模空挺作戦への転換を強調

 北朝鮮軍は、今回の空挺演習の写真では「IL-76」大型輸送機を使って落下傘降下を行っている。これは、北朝鮮軍の空挺作戦戦術の大きな転換なのかと思う。

 北朝鮮はこれまで「An-2」小型輸送機1機に空挺兵7人を搭乗させ、空から1機あるいは数十機で70人、最大300機で2000人程度が、隠密に侵攻するという戦術であった。

 多数機で侵攻するのになぜ隠密が可能かというと、この輸送機の翼と胴体のほとんどが布張りのため、かつ、地形を匍匐飛行することから、レーダーに映りにくいからだ。

 特に、少ない機数で韓国のほぼ全域に飛行していれば、韓国軍に発見されない可能性は高い。

 今回の写真を見ると、An-2ではなく、IL-76大型輸送機から落下傘降下を実施している。

 このIL-76輸送機は、120~140人の空挺兵、あるいは空挺戦車3台を輸送し投降下することができるが、敵地の防空ミサイルに発見されれば、簡単に撃墜されてしまう。

 ウクライナ戦争では、ロシア空挺部隊はウクライナ軍の混乱に乗じて最初の降投下(兵士の降下と重物料投下)には成功したが、増援の輸送機は撃墜された。

 朝鮮半島では、作戦範囲が狭いので韓国軍防空ミサイルを弾道ミサイルで破壊し尽くしていない限り、大型の輸送機を使った作戦成功の可能性はゼロに近い。

 大型輸送機を保有していれば、空挺作戦中に物量を後送することも可能になる。

 航続距離が4000~5000キロと長いので、日本への空挺作戦も可能になる。その成功の可能性は低いが、多くの選択肢を持つことになる。