【この記事のポイント】
●自民党の裏金問題をめぐる与野党攻防が続いている。安倍派幹部・下村博文氏が出席した政倫審も期待外れに終わり、逆に真相解明を望む国民の不満を募らせる結果を招いている。
●細川内閣で首相秘書官を務めた成田憲彦・駿河台大名誉教授は、そもそも「政倫審という制度自体に真実発見の能力がない」と説く。それはなぜか。
●岸田首相は事態収拾に向けた次なる一手として、二階元幹事長を含む大規模処分のカードを切ろうとしているが、果たして――。成田氏に聞いた。(JBpress)
政倫審は真実発見の制度にあらず
――衆議院政治倫理審査会が肩透かしに終わった印象です。永田町では、森元首相と確執があるとされる安倍派・下村博文氏が裏金をめぐる詳細を暴露するのではないかと期待感が高まっていましたが。
成田憲彦・元首相秘書官(以下、成田氏):騒ぎすぎです。そんなこと最初からあり得ない。
そもそも政倫審というのは、真実の発見のための制度ではありません。
政倫審というのは、政治倫理綱領や政治規範に違反したと疑われた者が、それについて弁明したり、政治倫理違反の状況について審査を受けたりするために開かれるものです。
真実を発見するという目的を果たすために、公開の場面で、質問者が持ち時間に従って順番に質問して「これはどうですか」「あれはどうですか」と聞くのがベストの方法かというと、まったく適していない方法です。
帝国議会以降、一問一答方式は日本の議会における基本的なパターンになっていますが、真実の発見ということにおいては適当な手法だとは言えません。
公開のテレビの前で順番に問い詰めて、「ここで勇気を持って真実を語ってください」って言ったって、そこで真実を語ったら下村さんは仲間を裏切ることになる。
それは彼の行動として称賛されるといって、いろいろ言わせたい方ははやし立てるけれど、客観的に見た場合、彼にとっての正しい行動かというとそうではないことが明らかです。
一番の問題は、日本の政治は、政治が目指すものと実際の仕組みが非常にちぐはぐだということです。
――真実を発見するという目的においては、例えばどんな手法が適していると考えますか。