米国の名門ロサンゼルス・タイムズ、まるで大谷翔平のファンクラブ新聞
写真、イラスト28枚24ページの大特集「大谷翔平の旅」
2024.3.19(火)
高濱 賛
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発行部数、広告収入激減で苦肉の策?
3月17日の日曜日、142年の歴史を誇る米西海岸の雄、ロサンゼルス・タイムズがドジャーズの大谷翔平選手のファンクラブの公式機関紙になったのか、と目を疑った。
全ページにタテぶち抜き、デザイン化した日本語で「大谷翔平の旅」と書かれた特集の表紙には、ワールドカップで投げる、ドジャーズのユニフォームで構える、エンジェルズのユニフォームで走るそれぞれの大谷選手が描かれている。
上段に「Los Angeles Times」、下段に「THE JOURNEY OF SHOHEI OHTANI」とある。
(enewspaper.latimes.com/desktop/latimes)
これが、かつては共和党超保守系で1941年12月8日には「Japs Open War on U.S. with Bombing of Hawaii」(ジャップス*1、真珠湾攻撃で対米開戦)と大見出しで報じた新聞である。
(granger.com/results.asp?)
*1=ジャップとは日本人のこと。現在は日本人に対する差別用語として使われていない。
創業者チャンドラー家が2000年に売却後、何回かオーナーが変わる過程で、穏健中道路線に変貌していった。
2018年には南アフリカ出身の中国系億万長者、パトリック・スン・シオン博士(バイオケミカルの開発で財を成した)が50億ドル(約550億円)で買収、現在に至っている。
オンライン・メディアの台頭で1990年122万部だった発行部数は2010年には60万部に半減、2024年現在10万5700部(全米主要紙第6位)に激減。
それと並行して広告収入は右肩下がり。これにコロナ禍が追い打ちをかけた。
今年1月には編集部門の2割に当たる編集幹部、デスク、記者ら115人を解雇した。
シオン氏は「泣いて馬謖を切った」と釈明した。
同じように発行部数を減らしてきたニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルが国際報道や経済情報という得意の分野をフル回転させてオンライン参入に成功したのに反して、「特技」のないロサンゼルス・タイムズは低迷してきた。
(statista.com/circulation-of-the-biggest-daily-newspapers-in-the-us)
そこに降って湧いた(実はドジャーズ球団の綿密に練られた戦略があったのだが)ように大谷選手が「隣町アナハイム」のエンジェルズから移籍してきたのだ。
「全世界のスポーツ選手の中で前代未聞の契約金」で大谷選手を獲得したのだ。
ロサンゼルス・タイムズはこの波に恥も外聞もなく乗った。
大谷選手入団と同時にスポーツ面には連日「オオタニもの」が掲載された。その大谷選手を慕って入団した山本由伸選手の記事も紙面をにぎわしている。