第96回アカデミー賞の司会を務めたジミー・キンメル氏(3月10日、写真:REX/アフロ)

生きることを突き詰めた日独合作、届かず

 米映画界最高の栄誉とされる第96回アカデミー賞の授賞式が3月10日(日本時間11日)、ロサンゼルスで開かれた。

 宮崎駿監督(83)の「君たちはどう生きるか」(The Boy and the Heron)が長編アニメ映画賞、山崎貴監督(59)の「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」も視覚効果賞を獲得し、日本作品のダブル受賞となった。

「君たちはどう生きるか」は、母を亡くした少年が奇妙な鳥に導かれて異世界を冒険するファンタジー。

「宮崎」ブランドが浸透している米国では、北米では昨年12月に公開され、初週の週末興行成績で1位になるなど、高く評価されていた。

 一方、視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0」は、東宝が独自の配給会社を設立、「ゴジラ」ブランドと2000以上の映画館で上映されたこともあって邦画で現地の累計興行収入歴代1位を記録した。

 VFX本場の米国作品を抑えて栄冠を獲得した。

 ノミネートされたドイツ人、ヴィム・ヴェンダ―ス監督、役所広司主演の「The Perfect Days」は惜しくも受賞には至らなかった。

 だが目下、ハリウッドでは真田広之が主演・共同プロデュースしたテレビ・ドラマ「The Shogun」が大好評で公開されるなど、日本映画人は大活躍である。

 アカデミー最優秀作品賞には、原爆を開発した科学者の伝記映画「オッペンハイマー」が選ばれた。

 同作はこのほか監督賞(クリストファー・ノーラン)や主演男優賞(キリアン・マーフィー)など計7冠を達成した。

news.yahoo.com/dons-sour-whine

 日本では、原爆が最初に投下された広島の悲劇を一切描かなかった点が厳しく非難されている。

 在米日本人ジャーナリストはこう感想をこう述べる。

世界唯一の原爆投下国の国民がその罪悪感から逃れようとする国民感情はまだまだ根強い。監督、脚本家にも限界があった現れだ」

 主演女優賞は「哀れなるものたち」のエマ・ストーンに決まった。

 長編ドキュメンタリー賞にはロシアによるウクライナ侵攻の実態を描いた「実録 マリウポリの20日間」が受賞。

 また、国際長編映画賞ではナチスがアウシュビッツで行ったホロコーストを非難した英国作品「The Zone of Interest」が受賞した。

 同作品のジョナソン・ゲイザー監督は、「ハマスによるイスラエル奇襲とガザへのイスラエル侵攻による犠牲者はまさに非人道的行為による犠牲者だ」と、イスラエル、ハマス双方を厳しく批判した。

 2年前の授賞式では、司会者が受賞者に平手打ちされるハプニング(ともに黒人エンターテイナー)があるなど、荒んだ空気が流れ、アカデミー賞自体のイメージが損なわれた。

 それに比べると、今回は戦争の悲惨さや少数民族の痛みや誇り、生きることの意味を問う優れた作品が勢ぞろいした。

「アカデミーの本来の姿を取り戻した」(ロサンゼルス・タイムズ)と評価された。