「なぜそれができない?」「なぜそういうことをしてしまう?」――想像を超える行動パターンを示す“今イチ使えない人材”が職場にいないだろうか。そういう人たちの深層心理を理解し、改善策を採るにはどうすればいいか。『「指示通り」ができない人たち』を執筆した、心理学博士の著者とともに考える。(JBpress編集部)

(榎本博明:MP人間科学研究所代表、心理学博士)

※本稿は『「指示通り」ができない人たち』(榎本博明著、日経BP 日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集したものです。

「やる気のなさが明らかに伝わってくる。仲間内で飲みに行ったときとかに、こんなに頑張ってるのに評価してもらえないんだからやってられない、っていうようなことを言っているらしい」

 職場にありがちな“今イチ使えない人材”を前にして、どうしたらよいのかわからず、途方に暮れることがないだろうか。自分の想像を超える行動パターンを示す人について、なぜそうなるのか、その心理メカニズムがまったくわからず、処遇に困ることがあるかもしれない。

 そして、いくらわかりやすく、論理立てて説明したつもりでも納得してもらえなかったりする。

 このような事例は、認知能力の問題、メタ認知能力の問題、非認知能力の問題、のおおまかに3つの問題に分けることができる。

 冒頭の例は非認知能力の問題と考えられる。このような今イチな人材にみられる問題点とその改善策を見ていこう。

ほめないとふて腐れる

 ほめて育てられた若者が多くなったことにより、逆境に弱い若者が目立つようになった。そうした若者にみられがちな特徴として、甘えの強さと感情コントロールの低さがある。今多くの職場で、そのような従業員への対応に頭を悩ます管理職が非常に多くなっている。

 ある管理職は、つぎのような悩みを口にする。

「最近の若い人は、私なんかの時代と違ってほめて育てられているから、うっかり厳しいことを言っちゃいけないって言いますよね」

『そうですね。親も学校の先生も厳しく育てるということがしにくくなってて、厳しいことを言われる機会が少なかったから、厳しいことを言われると傷ついてしまう、っていうことでしょうね』

「そうそう、傷つきやすい世代なんだって言いますよね。だから、私たちも、以前のように厳しく鍛えるっていうのは、もう時代遅れだからやめようっていうことになって、できるだけほめるようにとは心がけているんです」

『多くの職場がそんな感じになってますよね』

「そうでしょう。でも、仕事で成果を出したり、人一倍頑張ったりしたなら、自然にほめることもできますけど、目標をかなり下回ったり、ミスが目立ったりするのに、無理やりほめるのって、なんかおかしいじゃないですか」

『まあ、たとえ目標達成とかの成果につながらなくても、かなり努力したのがわかれば、ほめてあげることも大事だとは思いますけど、そうでないのに無理やりほめるのもわざとらしくなってしまいますね』

「そうですよね。もちろん有能な子はほめるし、そうでなくてもとくに頑張ったときはほめてますけど、仕事上ほめるべきことが見当たらないのにほめたりできないですよね。それは仕方ないって思うんですけど、それでどうも私たち上司に不満を持つ子がいるらしいんです」