『そのようなタイプは、まさにほめて育てられた人に多いと思います。常にほめられ、ほめられることでやる気になっていた。ということは、逆に言えば、ほめてもらえないとやる気になれない』
「たしかに、自分たちはほめられて育った世代だからほめられないとやる気が出ないし落ち込むって言ってましたね」
『ほめられればだれだって気分がいいし、ほめられて育つと、たえずポジティブな気分にしてもらえるため、ネガティブな気分をもち堪えることができにくくなってしまうんですね。だから成果を出せなかったり、ミスが多かったりしたときの、非常にネガティブな気分が耐えがたい』
「それはわかる気がします」
『評価してもらえることがほめられることだと考えれば、何らかの形で評価してもらえたら、やる気も出るのでは』
「だけど、成果につながってないんですよ。それでも評価するんですか?」
取り組み姿勢を評価して心理的報酬を
『評価と言っても種類があります。評価というと、成果、つまり結果の評価をイメージしがちですけど、仕事の取り組み姿勢の評価というのもあります。結果の評価に対して、プロセスの評価というのもあるわけです』
「プロセスの評価?」
『学校教育の現場でも、以前は学力試験の成績のような成果の評価が中心だったんですけど、今は取り組み姿勢とかのプロセスの評価も取り入れるようになっているんです。そういう風土で育った人たちの中には、成果が出せなくてもプロセス評価によってモチベーションを保っていた人もいると思うんですよね』
「なるほど、何となくわかる気もするんですけど……でも、それじゃ、どうすればいいんですか?」
『心理的報酬という概念があるんですけど、昇給や昇進といった金銭報酬や地位報酬で報いるのはなかなか難しくても、頑張ってるのはわかってるということを言葉で伝えることで心理的報酬を与えることができます』
「心理的報酬ですか」
『頑張ってるねとか、今回は成果につながらなかったけどその頑張りを続けてればきっとうまくいくよというような言葉をかけられると、評価してもらえた、頑張ってるのをわかってくれてる、と感じることができて、前向きの気持ちになれるでしょう』
「なるほどねえ。そういう意味での評価ならしてあげられそうです」
『ほめられて育った人たちは、周囲からほめてほしい、評価してほしいっていう気持ちが強いものですよね。そうした思いが根底にあるため、自分は頑張ったと思うと、きっとほめてもらえるはず、評価してもらえるはずといった期待を持ってしまいがちなんです』
「わかります」
『ところが、その期待が裏切られると、おっしゃるようにふて腐れた態度に出たりします。それは甘えだと言えばそうなんですけど、モチベーションを維持してもらうには、その甘えによる期待に多少は応えてあげることも必要かと思います』