「なぜそれができない?」「なぜそういうことをしてしまう?」――想像を超える行動パターンを示す“今イチ使えない人材”が職場にいないだろうか。そういう人たちの深層心理を理解し、改善策を採るにはどうすればいいか。『「指示通り」ができない人たち』を執筆した、心理学博士の著者とともに考える。(JBpress編集部)
(榎本博明:MP人間科学研究所代表、心理学博士)
※本稿は『「指示通り」ができない人たち』(榎本博明著、日経BP 日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集したものです。
「仕事上のミスがあまりに多いので、ミスを指摘してアドバイスしたのに、ムッとした表情になって、『それって説教ですか? 上から目線でものを言うの、やめてもらえませんか』とか言う」
職場にありがちな“今イチ使えない人材”を前にして、どうしたらよいのかわからず、途方に暮れることがないだろうか。自分の想像を超える行動パターンを示す人について、なぜそうなるのか、その心理メカニズムがまったくわからず、処遇に困ることがあるかもしれない。
そして、いくらわかりやすく、論理立てて説明したつもりでも納得してもらえなかったりする。
このような事例は、認知能力の問題、メタ認知能力の問題、非認知能力の問題、のおおまかに3つの問題に分けることができる。
冒頭の例はメタ認知能力の問題と考えられる。このような今イチな人材にみられる問題点とその改善策を見ていこう。
新人と周囲とで認識が真逆
職場には、人の言動について、「言い方が酷い。もっと他に言い方があるだろうに」とか「あの態度に傷ついた」など、あれこれ評するのに、自分自身の言動にはほとんど意識が向いていない人が結構いるのだ。そこで、さまざまなトラブルが生じることになる。
その種のトラブルに振り回されている管理職は、現在進行中の問題について、つぎのように語る。
「新人から『先輩たちから意地悪ばかりされていて、このままじゃどうにも身がもちません』と相談があったんです。でも、これまでこの職場で意地悪をされたといった話は出たことがないし、職場の雰囲気はとても良いと感じていたので、いったいどういうことなのか探るために、新人の日頃の様子やふだんのやり取りについて周囲の先輩たちに聞いてみたんです」
『それは良い対応ですね。一方的な言い分だけでは実態はわからないですからね』
「ええ、そう思いまして。で、周囲の人たちに聞いたところ、その新人が言うのとは真逆のことを言うんです」