『そうですか。経験豊かな熟練者が、まだ経験の浅い未熟な人に仕事のやり方を教える際には、言い方は別にしても、構図としては上から目線にならざるを得ないでしょうね。それに対して、その新人さんは、必要以上に過敏に反応している可能性があるというわけですね』

「はい、そうです。そうとしか思えません」

受け止め方が歪んでいる

『そのようなアドバイスの受け止め方について、新人さんにも何かお尋ねになりましたか?』

「ええ、率直に尋ねてみました。そうしたら、やっぱり受け止め方がかなり歪んでいるのがわかったんです」

『どんなふうに歪んでいるんですか?』

「その新人が言うには、先輩たちは自分のやり方をいちいち否定してくる、すぐにダメ出しをしてケチをつける、ほんとうに針のむしろで、こんなんじゃ仕事に集中できない、って言うんです。結局、自分のやり方が間違っているのを指摘されるのを意地悪って受け止めちゃうんですよね」

『やり方が違うという指摘も、こうすればいいというアドバイスも、ある意味では、その人が今しているやり方を否定することでもありますからね』

「でも、そうしないとちゃんと仕事ができるようにならないじゃないですか。それを否定されたと受け止めていたら進歩がないじゃないですか」

『その通りです。たしかにその方の受け止め方には歪みがありそうですね。やり方が間違っていたら率直に指摘してもらわないと、正しいやり方を身につけることができないですからね』

「そうですよ。それを、自分のやり方をいちいち否定してくる、意地悪だ、針のむしろだ、なんて言ってたら、できるようにならないじゃないですか」

『そうですね。自分のやり方をいちいち否定してくるというのは、そのやり方が間違ってるからで、けっして意地悪ではないですね。傷つけたらややこしいし、言いにくいからと、間違ったやり方をしていても指摘せずに放置する方が、かえって意地悪かもしれませんね』

「ほんとにそう思います。周囲の先輩たちは、よく投げ出さずに指導してくれていると思いますよ」