甘えによる期待に応え、被害感情の発生を防ぐ

 これは非認知能力の問題と言える。非認知能力というのは、自分をやる気にさせる力、忍耐強く物事に取り組む力、集中力、我慢する力、人の気持ちを共感する力、自分の感情をコントロールする力など、学力のような知的能力に直接含まれない能力のことである。

 そこで、ほめられて育った人にみられがちな甘えと期待が裏切られたときの反応について解説し、期待に応えてあげるためのアドバイスを行った。

 ほめられて育った人には、頑張ったんだからほめてもらえるはず、評価してもらえるはずといった期待が強い。それは、ほめられずに厳しく育てられた世代の人からすれば、甘ったれてるという感じに見えるでしょうけど、そういう環境で育ったわけなので、今さら生い立ちを変えるわけにはいかない。

 甘え理論の提唱者である精神医学者土居健朗によれば、甘えたい気持ちがそのままに受け入れられないとき、「すねる」「ひがむ」「ひねくれる」「恨む」といった心理が生じ、そこに被害者意識が含まれる。

 つまり、甘えを受け入れてくれないから「すねる」わけだが、すねながら甘えているとも言える。その結果として、「ふて腐れる」「やけくそになる」というようなことになる。仕事中のふて腐れた態度というのも、期待通りに評価してもらえないところからくる。

 自分が不当な扱いを受けたと曲解するとき「ひがむ」わけだが、それは自分の甘えの当てが外れたことによる。こんなに頑張ってるのに評価してくれないということでひがむわけだ。

 甘えないで相手に背を向けるのが「ひねくれる」だが、それは自分の甘えの期待に応えてくれなかったと感じることによる。どうせ評価してもらえないということでひねくれた態度を取ることになる。

 甘えが拒絶されたということで相手に敵意を向けるのが「恨む」である。厳しい上司に対する攻撃的感情は、甘えを受け入れてくれないと思うことによるものと言える。

 このように甘えが思うように通じないとき、すねたりひがんだりひねくれたり恨んだりするわけだが、そこには被害感情がある。モチベーションを維持してもらうには、対話の個所で触れたように、頑張りを認めるような言葉がけによって、甘えによる期待に応えてやり、被害感情の発生を防ぐことが大切となる。

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