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- 原油市場は平静を装っているが、地政学リスクがじわり高まっている。
- 1月21日、ロシア・サンクトペテルブルク近郊のガス関連施設がウクライナのドローンに攻撃され、操業停止に追い込まれた。原油関連施設への攻撃リスクも懸念される。
- イスラエル・ハマス紛争では米軍がフーシ派への攻撃を続けており、フーシ派と和平交渉をしてきたサウジアラビアの石油関連施設が報復攻撃を受けるリスクも高まっている。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
1月22日の米WTI原油先物価格は前週末比1.78ドル(2.4%)高の1バレル=75.19ドルで取引を終了した。ウクライナの攻撃でロシアからの原油供給に支障が生じる懸念が「買い」を誘った。
21日、ロシア北西部サンクトペテルブルク近郊のウスチルガ港にあるエネルギー大手ノバテクのガス関連の生産施設と輸出拠点が、ウクライナのドローン攻撃を受けて操業停止に追い込まれた。火災は収まったものの、操業再開には数週間を要すると言われている。
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西側諸国からの支援が滞り、苦境に陥りつつあるウクライナ軍はこのところ、ドローンを使ってロシア領内への攻撃を頻繁に行うようになっている。バルト海に面するサンクトペテルブルクの港が使用不能になったり、石油関連施設が攻撃を受けたりすれば、ロシアの石油輸出は大きな打撃を被ることは間違いない。すでに、石油関連施設も戦略目標の1つであるとされる。このため、ロシアの地政学リスクが久しぶりに意識された形だ*1。
*1:ウクライナのドローン攻撃、ロシアの主要石油輸出ルートを脅かす(1月23日付、ブルームバーグ)
だが、ロシアの地政学リスクの上昇も原油価格を上昇トレンドに戻すには力不足だと思う。市場では「原油市場は供給過剰」との認識が定着しているからだ。
足元の供給サイドの動きを見てみよう。