米英軍によるフーシ派への攻撃に対し、イエメンでは反発が広がる(写真:Morteza Nikoubazl/NurPhoto/共同通信イメージズ)
  • このところ中東情勢がさらに緊迫している。米英軍によるイエメンの親イラン武装組織フーシ派への攻撃だけではない。
  • イランは、同国産原油を積んだタンカーが昨年、米国に拿捕(だほ)されたことへの報復として同じ船を拿捕。バーレーンでは、同国が米英の作戦に参加したことへの報復をフーシ派から受けるリスクが高まっている。
  • カギを握るのがサウジアラビアだ。ハマスによるイスラエル攻撃以前からフーシ派との和平交渉を続けており、フーシ派との停戦合意をまとめられるか注目される。(JBpress)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格はこのところ1バレル=72ドル前後で推移している。

 米英両軍が1月11日、紅海で相次ぐ商船攻撃への報復措置としてイエメンの親イラン武装組織フーシ派の拠点を攻撃した。「中東情勢の一段の悪化が原油供給に悪影響を与える」との見方が広がり、原油価格は一時、1バレル=75ドル台に上昇したが、その後、72ドル台に下落した。原油市場に対する根強い需給悪化懸念が相場の重荷になっているからだ。

 まず供給サイドの動きから見てみたい。

 米国の原油生産量は日量1320万バレルと過去最高に近い水準を維持してきたが、厳しい寒波の襲来でノースダコタ州の原油生産量が日量28万バレル落ち込んでいる*1。米エネルギー情報局(EIA)は9日、米国の原油生産量は今年、来年ともに過去最高を更新するとの見方を示した。増加幅は昨年(日量100万バレル増)ほどではないものの、世界最大の原油生産国の地位は揺るがないようだ。

*1Deep Freeze Cuts North Dakota Oil Production by 280,000 Bpd
(1月15日付、OILPRICE)

(写真:Funtap/Shutterstock.com

 サウジアラビアとともに減産を続けるロシアの昨年12月の原油生産量は日量957万バレルと昨年3月以来の低水準だった。供給サイドは引き締まり気味だが、需要サイドの悪材料がこれを上回る形となっている。

 市場の関心が中国にあることは言うまでもない。

 中国の昨年の原油輸入量は前年比11%増の5億6399万トン(日量1128万バレル)となり、2021年の過去最高記録(日量1081万バレル)を更新した。だが、昨年12月の輸入量は前年比0.6%増の日量1143万バレルと頭打ちとなっている。

 昨年12月の消費者物価指数(CPI)が前年比0.3%安と3カ月連続でマイナスになるなど中国経済の不調が続いており、市場では「今年上期の中国の原油需要の伸びは大幅に鈍化する」との見方がコンセンサスになりつつある。