• 原油価格はガソリン価格などを通じて世界の物価・経済動向に極めて大きな影響を及ぼす。2024年はどのように推移するだろうか。
  • イスラエル・ハマス紛争は世界の原油市場を大きく左右する中東情勢を不安定化させ、地政学リスクを高めている。
  • 米中という2大経済大国の需要は弱含みで、主要産油国による減産の取り組みの効果も期待薄のため、2024年の原油市場の基本シナリオは「低位安定」となる。だが、原油価格を急騰させかねない地政学リスクをどう折り込むべきだろうか。(JBpress)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 2023年1月の原油価格(月平均)は1バレル=78ドルだったが、夏にかけて下落し、6月の原油価格は70ドルとなった。その後、上昇に転じ、9月に90ドルを付けた後、2023年末に向けて再び下落する展開となっている。

 年間平均の原油価格が1バレル=95ドル程度だった2022年に比べて2023年の原油価格は割安で推移した形で、最終的に2023年は1バレル=78ドル程度になる見込みだ。足元の水準はこれを若干下回っており、原稿執筆時点の12月27日、米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比1.46安の1バレル=74.11ドルで取引を終えた。

イエメン北部で軍事パレードを行うフーシ派戦闘員(写真:ゲッティ=共同イメージズ)

 最近は「イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での妨害行為で原油供給が減る」との懸念が原油価格を下支えしているが、2024年の原油価格はどうなるのだろうか。

 まず需給動向に関する最新の動きを見てみたい。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスの結束にほころびが生じている。

 12月21日、アンゴラがOPECから脱退することを表明した。アンゴラは11月末のOPECプラスの閣僚級会合で、サウジアラビアが推し進める協調減産の拡大に反対していた。アンゴラの脱退によってOPEC加盟国は12に減少する。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

 近年、OPECから脱退する国が相次いでいる。2019年にカタール、2020年にエクアドルがサウジアラビアとの摩擦などを理由にOPECから去っていった。

 アンゴラの原油生産量は日量110万バレル、OPEC全体の生産量(同2800万バレル)に占めるシェアは4%に過ぎない。だが、「今後、さらにOPECから脱退する国が出てくるのではないか」との臆測が生まれている。

 市場が懸念する「OPEC脱退懸念国」はどこだろうか?