• 原油市場で供給過剰懸念が強まっている。サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが公式販売価格を1バレル当たり2ドル引き下げた。
  • サウジアラビアは自主減産をしているがイラクやアフリカの産油国の増産がこれを打ち消している。サウジアラビアは価格引き下げでシェアを奪還する狙いとみられる。
  • 原油価格は70ドル割れ目前まで下がったが、イランの支援を受けるイスラム武装組織フーシ派の活動が激しさを増す懸念があり、くすぶる地政学リスクを侮ってはいけない。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 1月8日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前週末比3.04ドル(4.1%)安の1バレル=70.77ドルで取引を終えた。サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが7日に代表油種「アラビアンライト」の2月積みのアジア向け公式販売価格(OSP)を1バレル当たり2ドル引き下げると発表したことが主な要因だ。

サウジアラムコが公式販売価格を引き下げた(写真:ZUMA Press/アフロ)

 サウジアラムコはアラビアンライトの価格を2021年11月以来の低水準にすることで世界の原油市場のシェア拡大を狙う目的があるとされている。市場は「世界の原油需要が弱含みする」と嫌気し、売りが広がった。

 昨年の原油価格は年間で10.7%下落した。下落したのは3年ぶりのことだ。今年に入ってもこの流れが続いており、1バレル=70~75ドルの間で推移している。

 中東地域の地政学リスクは依然として高いものの、市場では世界経済の減速に伴う原油市場の供給過剰懸念の方が材料視されるようになっている。

 まず供給サイドの動きについて見てみたい。