- 中東情勢が一段と緊迫してきた。イランが相次いで周辺国のシリア、イラク、パキスタンにミサイル攻撃や空爆を実施。紛争が拡大する懸念が高まっている。
- イランが支援するフーシ派は商船の拿捕(だほ)を続ける構えで、米軍は18日、5度目となる同組織の軍事拠点に対する攻撃を行った。
- イランはこれまで、米英との直接的な衝突を避けるため、フーシ派などの武装組織を介した「代理戦争」に徹する「寸止め」作戦にとどめてきた。だが、英国防相が直接戦争への備えを訴えるなど、事態は悪化している。(JBpress)
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
イエメンの反政府武装組織・フーシ派が、紅海で民間の商船に昨秋以来繰り返し攻撃を続けている問題で、米軍は17日、同組織の軍事拠点に4度目の空爆を行ったと発表した。米英軍が合同で同組織に対する攻撃を開始してから1週間が経ったが、英高級紙ガーディアンは18日午前2時(現地)の電子版で、英軍機の関与については未確認としている*1。
*1:Red Sea crisis: US launches fourth round of strikes on Houthis in Yemen(The Guardian)
一方、フーシ派を支援するイランはこの数日、周辺のシリアやイラク、パキスタンに相次いでミサイル攻撃や空爆を行い、立て続けの越境攻撃に地域の緊張が高まっている。イランはこうした攻撃について、「イスラエルのスパイ拠点があった(イラク)」、「今月3日にイランで80人以上の死者を出した爆破事件に関与したテロ組織ヘの攻撃(シリア)」などとしている*2。
*2:Iran launches missile strikes in northern Iraq and Syria, claims to destroy Israeli spy base(CNN)
パキスタンに関しては、同国内で活動するスンニ派の武装勢力が、イランでの爆破や国境警察の拉致などに関わったことに対する攻撃と主張した。パキスタンは、少なくとも2人の子どもが死亡したこの越境攻撃が「露骨な主権侵害」に当たるとして猛反発。イラン大使の召喚を決定した。パキスタンの外務省は「パキスタンはこの違法行為に応じる権利がある」と主張し、18日にはイラン領内で武装勢力の攻撃を行った。
攻撃後、パキスタンは「イランの主権と領土の一体性を完全に尊重する」との声明を発表したが、イランに対する報復攻撃であるとも見られている。イスラム武装組織・ハマスによる昨年10月のイスラエル襲撃以来、地域の緊迫と不安定化がますます加速し、また、紛争拡大の様相を呈している感は否めない*3。
*3:Statement by the Spokesperson on Last Night’s Violation of Pakistan’s Sovereignty by Iran(MINISTRY OF FOREIGN AFFAIRS, GOVERNMENT OF PAKISTAN)
Iran strikes ‘militant bases’ in Pakistan in latest Middle East flashpoint(The Guardian)