イスラエルが孤立し始めている。写真はネタニヤフ首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • パレスチナ人男性たちを下着姿で連行する映像や画像がSNSで拡散されるなど、イスラエルによる非人道的な行為が激しく非難されている。
  • ガザ地区の死者は1万8000人を超え、止まらぬ犠牲者の拡大には、イスラエルと同国を支援する米国などを除く国際社会の大半から明確なNOが突きつけられた。12日には、国連総会で人道目的の即時停戦を求める決議案が、圧倒的賛成多数で採択された。
  • イスラエルはパレスチナ人の怒りの矛先をハマスに向けさせようとしたとの見方がある。だが、それは逆効果で、アラブ諸国などの憎悪をあおり、イスラエルは世界でも孤立し始めている。それこそハマスの思うつぼだとも指摘されている。(JBpress)

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 戦闘が続くイスラエルとイスラム組織ハマスの紛争に関するある動画や画像をめぐり、イスラエル軍が猛烈な非難を浴びている。12月7〜8日ごろからSNSで拡散されている動画や画像には、数十人から100人以上と見られるパレスチナ人男性が、ガザ地区の道端などで目隠しをされ、大半が下着しか着けていない状態で映っている。中には、トラックの荷台にほぼ裸のまま、すし詰め状態で運ばれている男性たちの姿が確認できるものもある。別の画像には、砂漠のような場所に正座をさせられている姿も見られる。兵士に靴を脱ぐよう命じられたのか、居並ぶ男性たちの傍らに、おびただしい数の靴が並ぶ画像もあった*1

*1Video shows stripped Palestinian men detained in Gaza(BBC)

下着姿でイスラエル軍に拘束されたパレスチナ人(出所:Xより)

 イスラエル側はこの男性たちがハマスの関係者で、10月7日の襲撃における容疑者らであると主張している。BBCの取材に対しイスラエルの広報担当は、イスラエルがハマスの掃討作戦を強化するため、数週間前に避難勧告をしたにもかかわらず、男性たちがこの地域にとどまり続けていたとして、拘束の正当性を強調している。

 しかし、ガーディアンなど複数の欧米メディアによれば、画像に写っている男性の中には国連職員やジャーナリスト、店の主人など多数の民間人が含まれているという。そして、こうした動画や画像に映る人々の知人や家族などの多くが、男性らがハマスなどの武装組織とは無関係だと証言している*2

*2Footage shows IDF parading scores of Palestinian men around in underwear(The Guardians)

 先のBBCの報道によれば、男性たちはイスラエル軍により、民家や、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の学校などから連行されたという。ネタニヤフ首相の上級顧問はBBCの取材に、こうした人々が国連の関係者である可能性を認めた上で、だからといってハマスの関係者ではないという確証はないと主張した。これに対しUNRWAの広報は、職員は厳格に選別されており、そのリストはイスラエルとも共有されていると反論している。

イスラエルはガザ地区への激しい攻撃を続けている(写真:ロイター/アフロ)

 こうしたショッキングな映像や画像に、いち早く危機感を示したのが赤十字国際委員会(ICRC)だ。8日、イスラエル軍が下着姿のパレスチナ人男性たちをさらし者にしていることに関して「国際人道法に従い、すべての拘束された人々を人間性と尊厳をもって扱うことの重要性を、特に強調する」と懸念を表明した。