イスラエル女性に対する性暴力に国際社会が沈黙しているとして抗議するデモ=エルサレムで10月27日撮影(写真:ロイター/アフロ)
  • イスラム組織ハマスが10月7日にイスラエルへ奇襲攻撃した際、数多くの性暴力が行われたとの疑惑について、国連など国際社会はなぜ「沈黙」してきたのかとの批判が高まっている。
  • 国連はようやく調査に動き出すが、イスラエル側は調査委員会が同国に対して「差別的」だとして協力しない構えを見せる。
  • ガザ地区の死者が1万6000人を超え、人道的な観点からイスラエルへの批判も強まるなか、相互不信が実態の究明を難しくしている。(JBpress)

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 イスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃してから2カ月近くが経った12月4日、国連本部前に150人ほどの参加者が集い、抗議の声を上げた。ユダヤ系の女性団体などが組織したこのデモは、ハマスが10月7日当初の襲撃で、多数の民間人に凄惨な性暴力を加えていたという証言から国連機関などの国際社会が目を背けていると糾弾したものだ。集会にはボディスーツの上に下着をつけ、股間などに血のりをつけた姿の女性らが居並び、ハマスによるという性暴力のすさまじさを表現した*1

*1The UN's silence on the rape of Israeli women makes a mockery of its campaign against violence(Telegraph)

10月7日、ハマスはイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けた(写真:ロイター/アフロ)

 11月末あたりから「ハマスによる大規模な性暴力」として複数の欧米メディアが相次いで報じている被害の実態は壮絶だ。英高級紙タイムズは12月2日、生存者や、遺体の収集にあたったボランティアらの証言をもとに、被害状況を生々しく詳報している。音楽祭で襲撃に遭い、8〜10人の男たちに暴行された挙句、頭部を撃たれて絶命した女性。暴行の激しさのあまり、骨盤が骨折した遺体。胸や股間を撃たれた形跡などがある遺体のほか、下半身が血に染まった遺体も多く、恐怖におののく表情や指を握りしめた状態の遺体もあったという*2

*2First Hamas fighters raped her. Then they shot her in the head(The Times)

 タイムズに加えロイター通信なども同様の報道を行い、各社はこうした証言を裏付ける画像を確認したと報じた。なお、タイムズはこうした画像や動画が凄惨(せいさん)すぎるため、掲載できないとも記している。英公共放送BBCは被害者には女性のみならず、男性も含まれていたという証言も伝えた。性的暴行の悲惨さを訴えるイスラエルの支援団体責任者はBBCに、ハマスが人々をあらゆる手段を講じて辱め、尊厳を傷つけたと話している*3

*3Hamas planned sexual violence as weapon of war - Israeli campaigner(BBC)