資金を寝かせていることに対する “罰金”
金融は経済社会の基礎ですから、常に安定した運営が求められています。しかし、いつ不測の事態が生じるか分かりません。そうした金融不安・信用不安によって金融機関が資金繰りに悪化した場合に備え、金融機関は預かり資産の一定比率(準備率)以上を日銀の当座預金に預け入れなければなりません。これが「準備預金制度」で、預け入れの最低金額を「法定準備預金額」と呼びます。準備率は市中の資金量をコントロール手段としても使われてきました。
金融機関が、法定準備預金額を超えて日銀に預けているものが「超過準備」です。マイナス金利とは、この超過準備に対する金利をマイナスにする金融政策です。
実は、異次元の金融緩和も開始から2〜3年経つと、「日銀が国債購入などで資金を金融機関に流しても資金は金融機関の内部にとどまって市中に流れず、投資や賃上げにつながっていない」という状況が鮮明になっていました。そして、どの金融機関も大きな超過準備を抱えるようになっていたのです。
超過準備にマイナスの金利がつくということは、資金を寝かせていると“罰金”を取られるようなものです。金融機関としては、その分、資金調達のコストが上昇することになります。お金を預けた方が金利を払うというこの仕組みは、市中の金利を引き下げ、住宅需要や設備投資などを活発にするとの期待もある一方、すでに十分に低い金利がこれ以上下がっても実体経済へのプラス効果は期待できないとの見方も強く存在しました。実際、マイナス金利を導入した際の金融機関決定会合では、政策委員9人の判断も「賛成5、反対4」と大きく割れていたのです。