脱炭素が進められているが、原油はなおもエネルギー源の主役。中東情勢次第では価格高騰による経済混乱も(写真:Maksim Safaniuk/Shutterstock.com
  • 中東情勢が悪化すれば第3次オイルショックが引き起こされるリスクがあり、それは1970年代の第1次、第2次とは比較にならないインパクトが予想される。
  • その場合、各国政府は大規模な財政出動と国債買い支えでパニックを収拾しようとするだろう。
  • 結果として、債券や預貯金の価値が失われ、石油や食料といった必需品や、貴金属に代表される実物資産の価格が上がる。その時、株価はどうなるのか?

(市岡 繁男:相場研究家)

イランに神経を尖らせるイスラエル

 1月3日掲載の前回コラム「まもなく米国株のピークか?日本のバブル崩壊時に酷似する上げ相場の終焉迫る」では、米連邦準備理事会(FRB)による急ピッチな利上げやマイナス成長が続くドイツ経済の現状を受けても、なお株高が続いてきた不可思議さに触れました。

【前回から読む】
まもなく米国株のピークか?日本のバブル崩壊時に酷似する上げ相場の終焉迫る

 世界は、長期化するウクライナ戦争やハマス・イスラエルの衝突で泥沼化する中東情勢によって、ますます先行きが不透明になっています。今回は、中東を巡る動きによって金融市場にどんな影響を受けるか考えてみます。

 2023年末、イランの最高指導者ハメネイ師はイスラエルによるイラン革命防衛隊・上級顧問の殺害を受けて、革命防衛隊やイラン軍に報復許可を与えたとされます。イスラエルの軍事施設や主要インフラを標的にするということですが、実際に報復に出れば、中東情勢がさらに悪化することは確実です。

 さらに国際原子力機関(IAEA)によると、イランは核活動を再加速しており、一時的に減速していた濃縮ウランの生産ペースを以前の水準に戻しているそうです。イスラエルは以前からイランの核武装準備に神経を尖らせており、いつ軍事行動に打って出てもおかしくはありません。

いつ本格的な戦争になってもおかしくない

 イスラエルはいま予備役を動員していますが、動員開始から3カ月経ったいま、彼らを復員させなければ経済が持たないとも言われています。レバノンを拠点とするヒズボラなどの敵対勢力は、そのタイミングを待って攻勢をかけるかもしれません。

 このようにイスラエル周辺は、いつ本格的な戦争になってもおかしくない状況です。

 では中東における紛争がエスカレートし、エネルギー価格が大幅に上昇したらどうなるでしょうか。

 1973~74年の第1次オイルショックの後、米国のインフレ率はいったん鈍化しましたが、その後は「イランの政情不安→第2次オイルショック」と続き、それまで以上に急騰しました。今回も同じパターンを繰り返す可能性があります(図1)。

【図1】出所:米労働統計局 ※一部、筆者がデータを延長した部分がある
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(本記事は多数のグラフを基に解説しています。正しく表示されない場合にはオリジナルサイト「JBpress」のページでお読みください)