- 2024年は長期にわたる円安局面はいったん止まり、緩やかな円高が進む展開が考えられる。
- だが、そんなメインシナリオを覆す変数となり得るのは11月に実施される米大統領選だ。
- 過去のアノマリー(経験則)から導き出せるものは何か。
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
円安リスクとしての米大統領選挙
前回コラム「今年の円高・ドル安は長期円安局面の小休止か、既に転換した『円高の歴史』」で論じたように、筆者の2024年に対するメインシナリオは「FRBの利下げに伴い米金利が低下し、円高・ドル安が進む」というオーソドックスなものだ。
【関連リンク】
◎今年の円高・ドル安は長期円安局面の小休止か、既に転換した「円高の歴史」(JBpress)
仮に、こうした「緩やかな円高」というメインシナリオが覆され、逆に円安が再起動する可能性があるとすれば、どのような要素が考えられるだろうか。
例えば、①FRB(米連邦準備理事会)の利上げ復帰、②米大統領選挙を受けたドル買い、③日銀の追加緩和などは考えられるだろう。
パウエルFRB議長が12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)において利下げ可能性を示唆している経緯も踏まえれば、①はあまりにも節操のない話であり、現実的な展開とは思えない。マイナス金利解除が争点になっている今、③は①以上にあり得ない話だろう。
では、②をどう考えるか。米大統領選挙にまつわる為替市場のアノマリー(経験則)を踏まえると、上記の①や③よりも現実的な円安リスクには思える。
大統領選挙日前後の100日間を対象として値動きを見ると、「選挙前はややドル安・円高、選挙後はドル高・円安」という傾向がある。
これは直近の傾向に限らず、米大統領選挙に関し、1976年以降の全12回、2004年以降の過去5回、2012年以降の過去3回、いずれで計算しても類似のイメージが得られる(次ページの図表①)。
2024年は上半期にFRBの政策転換が期待できるのだとすれば、こうした軌道を辿る可能性は、なおのこと警戒が必要だ。