その後は古巣である自民党に向かって、毒を含んだ「眞紀子節」を放ち、2009年の総選挙前には夫・直紀とともに民主党に入党し、民主党政権樹立の立役者となる。

「日本一妻に頭が上がらない夫」とも言われる田中直紀元参院議員(写真:橋本 昇)
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 が、その後の政治活動には首をかしげる事も多く、有権者からも見放されていったのか、民主党が歴史的大敗を喫した2012年の総選挙で落選。これが事実上の政界引退となった。

政治の閉塞感が強まる中で高まってきた「角栄再評価」の声

 それからの時代、政治と金の問題はより巧妙で悪質になった。しかし、言論弾圧とも言える風潮が続いたあげく、政治に立ち向かって意見する人間はまだ少ない。立ち向かう人間がいなくては真の国を愛する政治家も生まれない。

 田中角栄も田中眞紀子も国民の人気を集めた政治家だが、それは庶民の味方になってくれるのではないかという国民の期待感の表れだろう。

「パパ、パパ、こっちよ」と素っ頓狂な声で夫の選挙を手伝っていた田中眞紀子の姿を思い出すが、その「隣りのおばさん」的な親しみやすさが田中眞紀子ブームの源だった。田中角栄ブームも然り。

 近年、田中角栄を再評価する声が上がっているというが、昨今の政治状況ではさもありなんと思う。

【橋本昇】
30年にわたり、フランスの写真通信社sygma(現在はgetty images)の契約フォトグラファーとして、国内の被災地や海外の内戦、難民を取材。著書に『内戦の地に生きる―フォトグラファーが見た「いのち」』(岩波ジュニア新書)がある。

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