ウクライナのゼレンスキー大統領ウクライナのゼレンスキー大統領(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ウクライナでもガザでも、戦闘は終わりそうにない。戦争の帰趨は、基本的には軍事力の優劣によって決まるが、民主主義体制の機能不全が心配である。権威主義体制は、自由な言論を封殺するなどして、反対派を封じ込め、自らの政策の実現を図る。

選挙とポピュリズム

 民主主義体制の特色は、代表が国民の投票によって選ばれる、そして、権力の「均衡と抑制(checks and balances)」が維持されていることである。また、政府を批判することのできる言論の自由が保障されている。そのいずれもが独裁制よりも優れているとされる。

 第一の選挙については、「bullet(弾丸)よりもballot(票)」で決めるということである。

 ナチスを政権の座につけたのは、当時の世界で最も民主的なワイマール共和国における民主的な普通選挙であった。ヒトラーが独裁へと移行するのは、政権をとってからである。第一次世界大戦の講和条約(ヴェルサイユ条約)がドイツに課した過酷な賠償などの不満が有権者をナチスに追いやった。

 21世紀になって、ナチズムやファシズムと同じ手法で、扇動政治家(デマゴーグ)が大衆を唆せて、非常識な投票へと誘うことがある。ポピュリズムである。

 その典型例は、イギリスのEU離脱とトランプ大統領の誕生である。