・閉鎖されていた函嶺洞門が10年ぶりに一般公開された。
・10年前までは、車がひっきりなしに通過していたので、自らの足で通り抜ける体験ができたのは、箱根駅伝の選手たちぐらいだったろう。
・実際に函嶺洞門の中を歩いて通ると、昭和初期の土木遺産が持つすごさがひしひしと感じられた。
(牧村あきこ:土木フォトライター)
2024年1月2日、閉鎖されていた函嶺洞門(かんれいどうもん、神奈川県箱根町)が10年ぶりに一般公開された。現地を訪問し、実際に函嶺洞門の中を歩いて通ってみると、昭和初期の土木遺産が持つすごさがひしひしと感じられた。
この一般公開は、第100回箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)にあわせて行われたもの。10年前まで箱根駅伝5区および6区の選手は函嶺洞門の中を通っていたのだが、迂回するバイパスの開通で函嶺洞門は通行止めとなり、それに伴って翌年駅伝のルートが変更された。
※最後の年に函嶺洞門を通過する東洋大の設楽啓太選手の写真はこちら
なお、一般公開は8日まで行われている(神奈川県のWebページ)。
■一般公開日程
2024年1月2日 14時頃(※)から16時
2024年1月3日 10時頃(※)から16時
2024年1月4日から8日 9時から16時
※箱根駅伝の最終ランナーが現地通過後。状況により前後する可能性あり
この場所の険しさを改めて実感
公開初日の2日、14時すぎに現地を訪れた。見学者はひっきりなしに訪れて、写真を撮ったり、説明パネルをのぞき込んだりしている。交通規制が早めに解除されたので、予定の14時より前から公開を始め、そのときは駅伝見物の帰りの人でもっと混雑したそうだ。「たまたま公開していたので」という人がほとんどだろうが、そういう人にも関心を持ってもらえた点でも、意義のある公開だったと思う。
2年前には入れなかった洞門の内部の道路を歩いてみる。10年前までは観光バスや乗用車がひっきりなしに通過していたところだ。道幅が狭いので、以前なら歩いて通ることは難しかっただろう(歩行者用通路は開放部の外側にある。今回は通行できない)。ここを自らの足で通り抜けるという貴重な経験ができたのは、箱根駅伝の選手たちぐらいだったのだ。
内部は、函嶺洞門建設前や建設直後の写真、建設に至った経緯、通過した駅伝選手などの写真や説明のパネルがたくさん並んでいた。一般公開への意気込みが感じられる。
だが、一番強い印象を受けたのは、洞門を通り抜けて外に出たときだった。前回も見ていたはずなのだが、この場所の険しさに改めて気づいた。