函嶺洞門と2つの橋は、「国道一号箱根湯本道路施設」として、函嶺洞門が閉鎖された翌年の2015年に国の重要文化財となった。それぞれの優れた意匠と歴史的価値の高さが認められたからだ。

1933年(昭和8年)竣工の旭橋。親柱の照明は再建されたものだが、橋全体の佇まいに品格が漂う1933年(昭和8年)竣工の旭橋。親柱の照明は再建されたものだが、橋全体の佇まいに品格が漂う
旭橋より少し小さい千歳橋。照明は違うデザインが採用されている旭橋より少し小さい千歳橋。照明は違うデザインが採用されている

 行き交う人や車の安全を守り続けてきた函嶺洞門だったが、時代が進み国道の交通量が増えるにつれ、車道幅の狭さ(5.8m)が課題となった。カーブした洞門内では大型バスのすれ違いが難しく、定常的な渋滞発生の原因ともなっていたようだ。

 さらに2005年(平成17年)には台風によって坑口近くで土砂の崩落が発生するなど、安全面での対策も求められていた。

 このため、函嶺洞門を迂回するバイパスが建設され、2014年2月、函嶺洞門は通行止めとなり長い役目を終えたのだ。

今後は継続的な公開の可能性も

 1週間という限定公開ながら、約10年ぶりに内部見学が可能になった函嶺洞門。今後はどうなるのだろうか。

 2021年11月に現地を訪れた際は、函嶺洞門周辺が網のフェンスで囲われ、道路には舗装を突き抜けて背の高い雑草が生えていた。そのため「このまま放置されると、“廃墟”となっていくことは避けられないだろう」という不安を抱いた。

箱根駅伝5区が函嶺洞門を通過しなくなった理由 このままでは歴史的建造物がいずれ廃墟に(2022/1/1)