だが、そうではなかった。2年前と今回の写真を見比べてほしい。見違えるように整備されたことがわかる。中国の王宮をイメージして造られたという抗口も、「こんなに白かったのか」と驚くほどだ。

2021年11月撮影。舗装面には雑草が生え、草木が洞門に押し寄せているようだ2021年11月撮影。舗装面には雑草が生え、草木が洞門に押し寄せているようだ
2024年1月撮影。舗装面はきれいになり、左手前の法面には防災用のネットが設置されている2024年1月撮影。舗装面はきれいになり、左手前の法面には防災用のネットが設置されている

 函嶺洞門は神奈川県県西土木事務所小田原土木センターが管理している。その道路維持課荒井千里課長にお話を伺うことができた。荒井課長によると、閉鎖されていた10年間は、放置していたわけではなく、かなりの防災工事を行ったという。函嶺洞門はかなり急峻な地形の場所に作ったため、今後も石の崩落などが起こる可能性がある。そのため、函嶺洞門の上だけでなく、抗口の外、両側の法面(のりめん)にも崩落防止のネットを張るなどの措置を行ったそうだ。

 工事はまだ終わっていないため、今回の一般公開後にまた補修工事が予定されている。具体的なことは決まっていないものの、函嶺洞門が重要文化財として貴重なものであることを踏まえ、箱根町と協力して活用方法を検討中であるという。2年前に現地で受けた印象と異なり、函嶺洞門の保護・保全に向けた作業が行われていることが確認でき、安堵の気持ちでいっぱいだ。

 今後、継続的な公開はぜひ実現してほしいが、個人的な希望としては、何らかのイベントを定期的に開催するなど、函嶺洞門が造られた当時の輝きを取り戻すようなものにまでつながっていくといいと思う。
 

牧村あきこ
まきむら あきこ フォトライター。千葉大学薬学部卒。プログラミングなどIT系フィールドに長年籍を置き、当時は日経BP社月刊誌にて多くの記事を執筆。現在は廃線や水場を求めて現場取材を中心に行い、「Discover Doboku 日本の土木再発見」などに寄稿。コアな一人旅にフォーカスしたサイト「そろっぽ!」を運営中。