これまでの付き合いの中で、西が仲本に反論するようなことはほとんどなかった。このように異論を表することは珍しいことだったという。
「だって見出しになっているじゃないか」
「でもですよ、もし、それがウソであれば仲本さんは誤解したままで娘さんと縁を切ることになるんです。親子というのがそんな簡単に別れていいはずがありません」
西は執拗に仲本に考え直すべきだと説得を始めた。純歌を入れた3人で話し合った結果、娘のKに事情を聞くことにやっと仲本が同意し、Kの携帯と連絡が取れたのはこの日の夜のことだった。Kの弁明は前述している通りで、結果としては仲本を安堵させるものだった。
仲本の心を乱した週刊誌報道
わずか3日前の出来事を思い出しながら、ハンドルを握った西は南区の横浜市立病院へ向かった。14日に週刊新潮が発売された後も、記者が自分のアパートの周りをうろついていることを純歌は気づいていた。そのため「続編を書かれるのではないか」と心配になり、仲本に相談をしていた。
純歌からの電話を受けた仲本は「記者とは絶対に会わないように」と伝え、18日の朝に純歌の自宅に駆けつけようとしていた。そして事故に遭ったのである。
あれほど否定したのに記事にされた。しかも「ゴミ屋敷」と書かれ、「純歌には別に男ができたから別居している」と書かれたのだから仲本の腸は煮えくり返っていた。続編記事なんて書かれるワケにはいかない。そんな気持ちを抱いていた仲本の注意が散漫になっていたことは十分に考えられる。そんなさなかの事故だった。