「助かりますよね」
「改めて聴くと、いい曲だねえ」
西が感慨深げに口ずさんだ。
「そうでしょ。お医者さんが病室でCDをかけて刺激を与えて下さいっておっしゃったんで、ラジカセを持ってきたんです」
仲本が手術室から病室に戻ってきたのは純歌たちが到着してから間もなくのことだった。何本ものチューブで機械と体を繋がれた仲本は、意識のないままベッドに横たわっているだけだった。手術を終えた主治医の部屋に呼ばれていくと、医者は純歌に経過を説明しだした。
「手術ができるかどうかも微妙だったのですが、頭蓋骨に穴を開けてなんとかやってみました。今夜が峠でしょうから、まずそれを乗り越えてくれればいいと思います」
「助かりますよね」
純歌は自分に言い聞かせるように訊いた。
「そんなに安易なことではないのですが、仲本さんの頑張りに期待しましょう」